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2004/03/31 00:00 更新

わかる“MBAマーケティング”MBAの実践的マーケティングエッセンス
第5回 製品戦略

売れる製品と売れない製品の差がつくポイントは2つ。1つめは顧客の便益(ベネフィット)を明確に提示できているか、2つめはその製品が本当にその便益を顧客が享受できるようになっているかである。

 売れる製品戦略と、売れない製品戦略の差はどこでつくのか…、そのヒントを本稿でお話したい。その前に、マーケティングにおける製品の定義を確認しておこう。製品とは“顧客ニーズを満たすために市場に出されたすべてのもの”を言う。故に形あるもののみでなく、サービスも含むのだと認識しておいていただきたい。

 売れる製品と売れない製品の差がつくポイントは2つ。1つめは顧客の便益(ベネフィット)を明確に提示できているか、2つめはその製品が本当にその便益を顧客が享受できるようになっているかである。こうしていうと簡単そうだが、この2点も実際は奥が深い。詳しく見てみよう。

 1つめの顧客の便益であるが、顧客は製品そのものをただ所有、使用、消費することが目的ではなく、その製品を所有、使用、消費することで何らかの便益を得たいのである。顧客はドリル(製品)が欲しいのではなく、思ったとおりのアナ(便益)が欲しいのであるというのはマーケティングの教科書では言い古された言葉である。ちなみに、思ったとおりのアナを獲得するプロセスも便益の一部となりうるので、思ったとおりのアナを安全に・簡便に得ることが顧客の便益であるとも言えよう。自社が提供しようとする顧客便益を明確に定義するには、どのような便益を提供しないかを考えることが有効である。そのためには、前回までにご説明したセグメンテーションが生きてくる。自社が対象にしなかったセグメント(そのニーズ)と比較をすることで、自社が提供しようとしている便益を明確化しやすくなるのだ。

 2つめの、その製品が本当にその便益を顧客が享受できるようになっているかということは2段階で考えるとわかりやすいだろう。1段階目は、製品を1)コア便益 2)製品実態 3)付随機能の3層に分けで考えることである。まず中心になるのは、前段でも述べた、この製品に顧客がお金を払ってでも得たいと思う中核的便益である。PCに求める便益が“記憶・記録を正確にとっておくこと”なのか“思考プロセスの補助”なのか、それとも“最新のPCを保持していることによる満足感”なのかはよく見極めておくべきだろう。

 次に製品実態を確認することになる。製品実態を考える際には、品質水準・特徴・デザイン・ブランド名・パッケージの5点から整理することが多い。最初に見極めた“顧客の便益”を適切に満たすか…という基準でこの5点を考える。付随機能は、よりよく顧客便益を満たすために何が必要かということで、PCの便益が“安心して***の機能を使いたい”ということならば、製品保障やアフターサービスが必要な付随機能になってくる。

図

 通常のマーケティングならば、ここまで考えてくれば及第点となるが、MBAのマーケティングはこれからがポイントである。その製品が本当にその便益を顧客が享受できるようになっているかを考える2段階目はホールプロダクトという考え方である。ハーバード大学のレビット教授の説を借りれば、企業が顧客に説明する製品の機能(価値命題)と、製品が実際に発揮する機能の間には差がある、この差を埋めるために、本来の製品に各種のサービスや補助的製品を付け加えることで“ホールプロダクト”が生み出される。

 つまり、顧客の便益を正しく実現するためには、場合によっては自社のみでなく、他社の力をかりて(巻き込んで)製品・サービスを提供する必要が出てくるということである。レビットはホールプロダクトを4つのプロセスで説明している。

1)コアプロダクト:実際にあなたが出荷する製品。購入契約書に記載されている機能である。

2)期待プロダクト:顧客が前述の商品を購入するときに”こうであるはず“と期待している製品。顧客の購入目的を”最低限満足“させるためにそろっていなくてはいけない製品とサービスの集合体である。以前は通信目的でパソコンを購入しても、まずモデムなど通信に必要な機器は別売りであった。最近は通信に必要な機能はそろっているはずと期待する顧客のためにモデムなどは内蔵もしくはセットになって販売されるケースが多い。しかし、プロバイダーは追加で選択しなくてはいけない。この選択が初心者には苦痛である点が、現在のパソコンが期待プロダクトすらも満たしていないといわれる理由の一つかもしれない。また、現在の初心者ユーザーにとっては、家庭内据付サービスや、24時間対応のコールセンターなどは期待プロダクトの範疇であろう。

3)拡張プロダクト:数多くの付属品・サービスを付けてコアプロダクトの機能を拡張したものであり、顧客の購入目的を最大限満たす製品・サービスである。パソコンであれば、様々なソフトウエアや、デジカメなどの補助製品のみでなく、楽しめるコンテンツが拡張プロダクトである。

4)理想プロダクト:さらに多くの補助的な製品が市場に提供されることにより顧客に提供される機能の理論的上限が理想プロダクトである。単に楽しめるコンテンツが存在するだけでなく、ストレス無く本当に自分の欲しいコンテンツに瞬時にありつけるサービスや、完全にウイルスから保守してくれるサービスなどであろうか?Ask Jeevesもトレンド・マイクロもまだその域には達していない。

 ここまで見てきておわかりのように、拡張プロダクト以降は他社(場合によっては顧客)を巻きこんだ生態系を作ることにが必要になるケースが多いのである。ハード・ソフト・サービスを巻き込んだ製品戦略をいかにつくるかが成功のポイントになってくる。実例としてはマイクロソフトの戦略が有名だが、ソフトバンクBBの戦略も実はこのホールプロダクトの考えに沿っているのだ。単にADSLブロードバンドを提供するだけでなく、顧客がそのブロードバンドをより便利に、より楽しめるように周辺機器や、ラグナログのような世界NO.1のオンラインゲームをグループ会社で提供している。

 要は、顧客に購入し続けてもらう製品を開発するためには、提供する製品・サービスに制約を設けて考えないことが必要なのである。収益性・実現性の検証はその後で頭を悩ますのだ。

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関連記事
▼第4回 ポジショニング戦略
▼第3回 顧客を知る(セグメンテーション・ターゲティング)
▼第2回 市場分析
▼第1回 マーケティングパワー

関連リンク
▼OPINION:ニッセイ・キャピタル

[池上重輔,ニッセイ・キャピタル]

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