(前編はこちら)
要求開発においては、業務の現場と検討する単位、検討の過程での課題や決定事項を、上記の要求の構造に従って分析し、記述することになる。あらかじめ構造を要求分析担当者間で共有しながら、要求構造のレベルごとに記述レベル・品質を設定することで、大きなプロジェクトであっても一定の構造、品質に従った現場の要求を定義することが可能となる。
また、要求レベル間の関係性も同時に定義しながら現場の要求を記述することで、つねに上位の要求に紐付ける形での要求の詳細化が実施できる。従来は、この要求の構造はチームもしくは人単位に異なっていたのがほとんどである。これをプロジェクトとして一定のレベルに揃え、可視化し、共有化することは、要求を設計にシームレスにつなげるためにも必要であり、設計・開発の後工程の品質向上にも大きく寄与していく。
要求管理の考え方は重要ではあるが、非常に困難であり実現性は低いとの見方が一般的である。現在でも市場には数種類の要求管理ツールが販売されているが、とくにビジネスアプリケーションの分野で実際にその適用に成功した例はあまりない。そのおもな要因として、維持管理の困難性があげられる。
要求を管理するメリットとして多くあげられるのが、要求が変更・追加になった場合に再テストや再修正が必要となる部分を自動的に把握できることである。しかし、その実現のためには各要求要素間または要求と各設計要素間の関係が正確に維持管理されていることが前提となる。しかし、これが大変に難しかったのである。
要求の構造があまり意識されず要求が曖昧な文章で記述されていると、要求の関連性が複雑化し、正確な関係がわからなくなる。また、それを維持することは非常に負荷のかかる作業となり、結局徹底できない結果に陥ってしまう。このため、要求管理を実現する上では要素間の関係性維持の負荷を最小限に抑える工夫が必要である。ポイントは、現場の要求やシステムの仕様をまとまった単位ごとに記述することにより、要求の変更が生じても、その関係性にあまり変更が起きないような構造を定義することである。
本稿で述べたような要求開発・要求管理の考え方を扱う学問分野として要求工学がある。経済産業省が本年度に設立を予定しているソフトウェアエンジニアリングセンター(SEC:Software Engineering Center)では、要求工学を重点研究分野として位置付け、すでに検討会を実施している。また、2004年9月には京都で要求工学の国際学会も開催されることになっており、要求工学は今後の発展が期待される。
NRIでも、システムの品質向上と生産性向上のために、エンタープライズアプリケーションを前提とした要求構造と、それをベースにした要求開発・要求管理手法のプロトタイプシステムの構築や、プロジェクト管理や他工程分野への応用に取り組んでいる。
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