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情報メディア・成長力ランキング2005とは「情報メディア白書2005」より〜(1)

» 2004年12月17日 00時00分 公開
[井上忠靖,電通総研]

 電通総研では毎年「情報メディア白書」(ダイヤモンド社、1万5750円)を編集・刊行している。このたび2005年版を刊行する運びとなった。

 そこで今回「情報メディア白書2005」の刊行を記念して、情報メディア市場の現在と今後の可能性について様々な角度から、電通総研独自の切り口で、最近の情報メディアの潮流について読み解いていきたい。

 なお、本連載で使用しているデータについては、特にことわりのない限り「情報メディア白書2005」内のものであり、詳しくお知りになりたい方はそちらをお買い求め頂ければ幸いである。

 さて、第1回目は「情報メディア・成長力ランキング2005とは」である。

1. 2004年のNo.1は「映画(DVD)」

図表1 (図表1)【情報メディア・成長力ランキング2005 】

 電通総研「情報メディア・成長力ランキング2005」とは、2004年までの情報メディア業界の各種のデータを分析、情報メディアの全10業界について、成長性のあった業界から順に格付けを行った、電通総研独自のランキングである 。

 なお、成長性の判断については、(1)対前年比の成長率、(2)過去5年〜10年ほどの市場トレンドの推移(騰落率)、(3)2004年時点での収益力や収益構造分析に来年以降の成長の見通しを総合的に勘案(成長度評価)、の3つの要素に基づき電通総研が独自に算出したものである。

 「情報メディア・成長力ランキング2005」の第1位は、「映像(映画・DVD)」である。劇映画の年間興行収入は2000億円以上をコンスタントに記録するようになっており、好調さを維持している。

 また、事業構造においても、収益源の多角化が進んでいる。近年特にDVDソフトの販売枚数・金額が伸長しており、収益力の向上に大きく貢献している(図表2)。

 2004年にはDVDプレイヤー(&レコーダー)の販売台数がアテネ五輪効果等の影響で急増したが、この効果がソフト面に波及し、2005年以降はさらに市場が拡大していく可能性が高いことから、1位とした。

図表2 図表2:【日本のDVD/ビデオ市場規模推移】(「情報メディア白書2005」より)

*2004年については電通総研予測値

 第2位は、ブロードバンドの家庭への急速な普及により、90年代後半以降前年比10〜40%の伸びで急速に市場規模を拡大してきた「インターネット」である。

 もっとも、過去5年の成長率は著しいが、2003年以降家庭向けのネット普及率が飽和しつつあり、また競争環境の激化から参入プレイヤーの収益率が急速に低下している。そうした点を考慮し、総合2位とした。

2. 好調な「テレビ」と「携帯電話」

 次に成長性が期待される業界として、「テレビ」を第3位としてあげた。民放各社が広告収入の好調な上、有料放送サービスであるCATVや衛星放送の加入率も順調に伸びている。

 特にCATVの普及率がここに来て急激に加速しており、1,726万世帯、家庭普及率で34.6%に及んでいる 。特に首都圏では6割以上もの家庭がCATV経由でテレビ視聴をしているといわれており、かつて日本はCATV後進国のような印象が持たれていたが、ここ数年状況は一変し、今やCATV大国の仲間入りを果たそうとしている。

 一方、携帯電話についても、依然として好調ながらも、90年代後半〜2000年にかけての爆発的な成長期の時期は過ぎ、すでに安定期に入っていると判断される。こうしたことから4位にとどめた。

 1999年のiモード(ドコモ)や2001年の写メール(Jフォン・現ボーダフォン)の登場以降、高付加価値訴求の傾向が強まっているが、これは通信キャリアにとっては必ずしも増収に結びついていない。社会的なインパクトとしては依然大きな情報発信力を有しているものの、成長力ランキングの中では比較的中位にとどまっている。

3. 下位に沈み巻き返しが期待される「ゲーム」「音楽」

(1)ゲーム

 一方下位に目を向けると、急速に市場が縮小している「ゲーム」を11位とした。特に家庭向けビデオゲームソフトの販売の落ち込みが目立っており、2003年には3,091億円と最盛期の1997年の5,833億円と比較すると半減している。この傾向は2004年も続くことが予想され、3000億円を割る可能性もある。

 もっとも2005年以降は回復が期待できる。この12月の商戦には、Nintendo DS(任天堂)とPSP(SCEI)という、ゲーム業界の二大陣営が相次いで最新の携帯型ゲーム機を投入、商戦での販売の好調さが伝えられており、久しぶりに前年度比増を記録することが予想される。

 またアーケードゲームと呼ばれる業務用の市場では堅調に市場の伸びを示していることも明るい材料である。さらにオンライン・ゲーム市場が日本でも本格的に軌道に乗っていくことが期待されており、一部の企業では収益率の向上に寄与している例も出始めており、今後の一層の成長が期待される。

(2)音楽

 ゲーム業界同様に苦況にあるのが「音楽」業界で、5年連続で前年割れを記録し苦戦しており、残念ながら本ランキングでは最下位とした。2003年前年比で10%減の3,986億円と15年前の市場規模の水準にまで戻っている。

 2004年についても依然として苦戦が続いており、前年比割れは避けられそうにない情勢となっている。(図表3)

図表3 図表3:【日本の音楽市場規模推移】(「情報メディア白書2005」より)

*2004年については電通総研予測値

 もっともこの1年、着メロ市場の拡大に加えていわゆる「着うた」と呼ばれる携帯電話向けの音楽サービス市場が急速に拡大していること、また米Apple社の「iTunes Music Store」に代表されるオンライン音楽配信事業での成功事例の登場など、この1年ビジネスモデルの構造変化の兆しも見られた。これまで苦戦をしてきた市場であるがゆえ、逆にその巻き返しが最も注目される業界でもある。

4. 勝ち負けが鮮明化する情報メディア業界

 情報メディア市場は、90年代半ばまでは全ての市場が右肩上がりで成長してきた市場であり、それがゆえに「マルチメディア市場」や「ユビキタス市場」などと称され、注目を集め続けてきた。しかしここに来て勝ち負けが鮮明化する傾向が強まりつつある。

 ではその勝ち負けを分けた要因は何であったのだろうか?そこで次回以降、ランキング決定に至った経緯をより詳細に解説するとともに、個別の市場別に分析、今情報メディア業界に何が起こっているのか、これからどこに向かおうとしているのか、論じていく予定である。

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