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次世代著作権保護技術を見据えた「賢いAV機器選び」コラム(1/3 ページ)

» 2005年07月31日 02時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 前回、次世代光ディスクで採用される予定になっている著作権保護の枠組み「AACS(Advanced Access Content System)」について触れてからずいぶん時間が経過した。

 その間、途中経過をブログの中で書いた事はあったが、正式な仕事としてのコラムでは取り上げてこなかった。新しく入ってくる情報が非常に限定的だからだ。

 現時点においても、注目されているコンテンツの出力制御(どの出力端子に、どの程度の品質の映像までを出力しても良いか)は継続審議中で、その決定は8月になるという事だけが決まっている。

 とはいえボーナス商戦のさなか、8月の決定を見るまで何の判断もできない、あるいはAACSの方針について知らなかった、なんてことはないようにしたい。そこで現時点での情報を再度まとめ、現段階でどのような“モノ選び”をしておくのが良いかを考えてみた。

(再び)AACSとは

 簡単に復習しておくと、AACSというのは著作権が付与された市販コンテンツの保護を目的に、その運用の枠組みを話し合う団体である。Blu-ray DiscとHD DVDは両方ともAACSの枠組みに対応する事が決まっている。

 AACSに参加しているのは、主にコンテンツベンダー、家電メーカー、コンピュータメーカーだ。主だったところでは、ワーナー/ディズニー/ソニー/松下電器産業/東芝/マイクロソフト/IBMなどが参加している。既に暗号化の詳細については仕様が公開済みだ。

 そのAACS内で現在紛糾中で、4月から大幅に予定をずらしつつも決めることができていないのが「映像の出力制御をどのように行うか」である。

 映像のコピー防止技術にはマクロビジョンというものがあり、一般的な映像機器はすべて、マクロビジョンの信号が入った映像を複製できない。しかし、マクロビジョンはハイビジョン信号に対応していないうえ、著作権保護上も完璧とは言い難い面がある。

 そこでコンテンツベンダーが「アナログのハイビジョン信号の出力端子(D端子あるいは映像コンポーネント端子)には、次世代光ディスクにHD映像として記録される映像を出力したくないと」強く主張しているのだ(市販パッケージのみであり、録画した映像はアナログ出力が可能)。これに対して家電メーカーは一斉に「現実的ではない」と反発している。これが、そもそも紛糾している原因だ。

 保護できないアナログはやめて、機器同士の認証を行った後、データを暗号化してデジタルデータで伝送できるHDCPに対応したデジタルインタフェース(DVIもしくはHDMI)にのみ出力し、アナログ出力には480Pにダウンコンバートして出力する案が、コンテンツベンダー側の骨格だ。

 ……と、言葉で言えば簡単だが、実際にはデジタルインタフェースの付いたテレビはほとんど普及していない。

 プロジェクターは搭載率が高いが、それもここ2年ほどの新機種が中心であり、とてもではないが、急峻なHDMI端子の普及など考えられない。

 家電メーカーが現実的ではないと反発しているのは、買い換えサイクルが長いテレビが、やっとハイビジョン化しようとしている時に、デジタルインタフェース必須といった条件を付けてしまうと消費者の反感を買う上、次世代光ディスクドライブを搭載した製品の普及に深刻な影響を与えるからだ。

 一部のメディアでは、HDCP対応インタフェースが必須になることで、テレビの買い換えを促すのではないかとの分析をしているが、筆者は全く信じられない。家電メーカーは、身をもってテレビの買い換えサイクルの長さを知っているからだ。既にハイビジョンに対応した映像機器を持っているユーザーが、次世代光ディスクのために買い換えを行い、それがブームとなって需要を喚起するなどあり得ない。

 だからこそ「現実的ではない」のである。

 しかし、現時点でもHDMI端子を装備していないデジタルハイビジョンテレビが新製品として発表されている。すべてとは言わないもののメーカー側にも多少の非はある。ごく一部のローエンド製品は別として、すべての製品にHDMI端子を装備した上で、店頭での告知があるのがベストだろう。ボーナス商戦という時期的に見過ごすことができるタイミングとは思えない。

有力な出力制御案は2つ

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