HD(高解像)映像パッケージソフトの著作権保護に関する枠組み、AACS(Advanced Access Content System)のドラフト仕様が4月14日に公開された。
AACSは様々な紆余曲折を経て、映画業界、家電業界、それにIT業界の企業が集まり、HD映像パッケージの著作権保護手法を統一するために生まれたものだ。IBM/Intel/Microsoft/松下電器産業/ソニー/東芝/Walt Disney/Warner Bros. Studiosで構成するAACS License Administrator(AACS LA)が策定を行っている。
Blu-ray DiscとHD DVDの両陣営が参加していることからもわかるとおり、AACSは次世代光ディスク戦争の決着にかかわらず、すべてのHD映像パッケージに対して拘束力を発揮することになる。
AACSについては何度かコラムで触れたことがあったが、これは著作権保護の枠組みについて決められたものだ。コンテンツの暗号化をどのような手法で実装するのか。保護されたコンテンツの運用はどこまでを許し、何を禁止するのか。
AACSで枠組みを決め、それに対応したハードウェアに対し、AACSに賛同するコンテンツベンダーがパッケージソフトをリリースする。いわば“著作権保護に関してきちんとやってますよ”というお墨付きをもらうための基準を示したものだ。
年初のインタビューにおいて、東芝デジタルメディアネットワーク社・社長の藤井美英氏が「4月中にAACSが確定すれば、年内にHD DVDプレーヤを発売できる」と話したが、これはAACSが確定しない限り、著作権保護機能を実装できず、よって検証作業などを進める時間が足りなくなってしまうためだ。
暗号化処理に関しては128ビットのAESを用いるなど基本部分は決まっていたため、ハードウェア側の対応準備は昨年中に、各社ともほぼ終えていたという。今回、ドラフト仕様が発行されたことで、開発を前へと前進させることが可能になった。
東芝はAACS 0.9の発行に関して「現在、予定通り第4四半期のHD DVDプレーヤー発売へ向けて鋭意開発中です」とコメントしている。ただしBD陣営は慎重な姿勢を崩しておらず、圧縮コーデックのデコーダICなどを含め、来年の春ぐらいがBD-ROM再生のサポートタイミングだとしている。つまり、現時点では昨年末から言われていたスケジュールに大きな変更はない。
今回発表されたAACS 0.9は、「コンテンツを暗号化するための基本的な手法」、「ROMメディアを用いた映像パッケージでの暗号化実装手法」、「記録型映像メディアにおける暗号化実装手法」の3つ。各仕様はAACS LAのWebページからダウンロードできる。
もっとも、決まっているのは暗号化の手法、枠組みだけだ。ハードウェア開発を前進させることが可能にはなったが、まだ不明な部分、特にエンドユーザーにとって重要な部分は発表されていない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR