コラム
» 2007年04月28日 13時00分 UPDATE

ケータイネットの現場から:「下流」ではないケータイヘビーユーザー

携帯向けネットサービスのヘビーユーザーは「PCを使えない“下流”な人々」と誤解されることもある。だが実際は、自分でサイト構築して情報発信しているリテラシーの高い人も多いようだ。“新しい携帯ヘビーユーザー層”が見られる日も遠くないかもしれない。

[佐藤崇,ITmedia]

 以前ITmediaの取材を受けた際「100万人まで携帯ネットユーザーを集めることは簡単」という話をしました。ただ100万人はそれなりの規模のユーザー数ですし、携帯ネットサービスを手がけたことのない方からすれば「そんなに簡単なわけがない」と思われるかもしれません。

 公式サイトではない「一般サイト」では特に、ヘビーユーザーとよばれる人々が中心に活用し、その周りに少しずつ利用者が集まってくる――という流れでユーザーが増えていきます。携帯のヘビーユーザー層は数百万人はいると、これまでの経験から私は感じています。

 つまり、一般サイトで携帯ネットサービスを成功させるためには、ヘビーユーザーを手っ取り早く集めてしまうことが重要で、それだけで100万人は突破できる、ということになります。

 では、そのヘビーユーザーはどこにいるのでしょうか。

携帯ヘビーユーザーとは

 PCを使う一般のインターネットユーザーには、「携帯ヘビーユーザーは、PCを使いこなすことができないリテラシーの低い人」と考える人もいるようですが、まんざらそうでもないようなのです。これまでの経験から見て、一般サイトのヘビーユーザーには、下記のような人たちが多いようです。

  • PCを持たない人
  • PCを持っているが、携帯がコミュニケーションの中心な人
  • 頻繁にインターネットを使いたい人
  • 携帯が好きな人
  • 収益性を求める人

 重要なのは、PCを使える・使えないではなく、とにかく携帯で活発にコミュニケーションする人たちだ、ということです。ヘビーユーザーは、携帯をコミュニケーションの中心として頻繁に利用していたり、携帯から1日に何度もサイトを更新していたり、携帯サイトだけで月間数百万円の収益を上げる収益ツールにしていたりするなど、生活の中心に携帯ネットがあって、たまたまそれを使いこなしている人たちなのではないか、と思います。

 一日に何度も携帯サイトを使えば、それなりに通信費もかかるわけで、携帯ヘビーユーザー像としてステレオタイプ的に言われる「下流な若者」とも思えません。特に携帯で携帯サイトを作るほど携帯を使いこなしている人が、携帯ネットのヘビーユーザーの中心的な存在になっているのではないかと思っており、そういう人が500万人ぐらいはいるのではないかと感じています。

 この構造は、ブロガーと呼ばれる人たちと似ているような気もします。ブログをよく読むユーザーが、自らブログを活用して情報発信をしているブロガーであるケースは想像に難くないでしょう。「ブロガーはHTMLを駆使してWebサイトを作れない人たち」とは決め付けられないのです。

携帯で携帯サイトを作る人

 「魔法のiらんど」というサイトをご存知でしょうか。1999年からある老舗の携帯サイト作成サービスで、携帯から更新しやすいよう作られています。最近映画化も決まった「恋空」というケータイ小説が生まれた場所としても記憶に新しいのではないでしょうか。

 世の中の多くの人には「携帯向けのサイトはあくまでPCで作成する」という先入観があるようですが、魔法のiランドは、携帯から携帯サイトを作成する仕組みで最初に成功したサービスだったように思います。

 振り返ってみると、2000年の終わりごろまでは、携帯サイトはどちらかといえば先進的なモバイラーの人たちが利用の中心だったのですが、この時期に突如「世俗化」が進行しました。魔法のiらんどが使われるようになったこの時期は、女性向けポータルサービス「girlswalker.com」が誕生したり、迷惑メールが社会問題化した時期でもありました。

 魔法のiらんどと同様な携帯サイト作成サービスは現在、多数乱立していますし、ブログやモバイルSNSなども増えています。携帯からだけブログを更新するユーザーもかなりいますし、モバゲータウンなどPCを最初から排除したサービスが登場するなど、今は数年前では考えられないほど、携帯からの情報発信が手軽になっています。

携帯だけで運営することの有利さ

 PCで携帯サイトを構築すると分からない点が、携帯で携帯サイトを運営すると見えてくることがあります。

 例えば絵文字を取ってみても、各キャリアごとに若干イメージが違います。これを相互変換エンジンなどを使うだけではケータイユーザーが感じるイメージを理解し損ねてしまうこともあります。

 また、携帯サイト向けのコピーライティングはPCのそれとはどうやら違うようです。携帯は1画面に表示できる文字数が少ないため、携帯サイト作成本には「半角カタカナを使え」と書いてあったりしますが、事業者によってはわざと全角カタカナを使っているケースもあり、そこには何らかの狙いがあるようです。

 ほかにも、メール本文に記載するURLをとにかく短くするなど、携帯をヘビーに利用している人ならではの視点を生かしたサービスは、PCから作ったサービスとは、ずいぶん見え方が異なることがあります。

 PCで携帯サイトを構築していても、こうした微妙なクリエイティブの差分を読み取れればよいのでしょうが、なかなかそうもいきません。携帯で頻繁にサイト更新し、携帯ユーザー向けに最適化されている、という点で、携帯だけで作成された携帯サイトの方が人気が出るケースはこれまでにも多々あったようです。

 ケータイ小説が最近流行っていますが、大手作家が入り込まないこの未開拓地で着実に読者の支持を集めているのは、携帯ユーザーの最新ニーズに対応した作品のようです。

 逆にケータイ小説で大ヒットした作品が書籍化されると「なぜこんな作品が受けるのか」と思われることも今後増えていくことでしょう。ケータイサイトをPCから閲覧して情報量が少ないことに嘆くPCユーザーとそれはどこか似ています。

サイト制作者の心つかんだ「モバゲータウン」

 一般サイトのヘビーユーザーであるこうしたサイト制作者は、どこに集まっているのでしょうか。

 まず、魔法のiランドなどのホームページ作成サービスに一定数存在するようです。携帯向けアフィリエイトネットワークユーザーも、自分のサイトにアフィリエイトリンクを張り付けているわけですから、サイト制作者だと考えられます。

 ディー・エヌ・エー(DeNA)の携帯SNS「モバゲータウン」の初期ユーザーは、同社が運営していた業界最大手のモバイルアフィリエイトサービス「ポケットアフィリエイト」ユーザーが多かった、というのは有名な話です。

 SNSのようなコミュニティーを醸成していくためには、ただ闇雲にマーケティング活動を行って利用者を集めればいい訳ではなく、ヘビーユーザーからライトユーザーがきれいに構造化される状況をいかにして作り上げるかが鍵となります。モバゲーはポケットアフィリエイトユーザーをベースにしてヘビーユーザーをまずつかみ、その周辺にユーザーを拡大して成功したと言えるでしょう。

 当社の展開するモバイル検索サイト「F★ROUTE」も同様です。当社はF★ROUTEを始める前から、ヘビーユーザーが滞留する携帯メールマガジンとランキングサイトを運営しており、その2サービスのユーザーを中心にしてF★ROUTEのユーザーも増えてきました。

 最近はmixiモバイルなど、携帯でユーザーが情報発信できるサービスが増えています。これらは従来の「携帯で携帯サイトを作る」よりもさらに敷居が低くなっていますから、、携帯サイト制作者=携帯ヘビーユーザーは今、急速な勢いでコモディティー化していると言えそうです。

 ライトユーザーが携帯を中心にして情報発信・利用していく世界は遅かれ早かれやってくるのでしょうが、mixiモバイルなどで情報発信を始めた“新しい携帯ヘビーユーザー層”が見られる日も遠くないのかもしれません。

佐藤崇

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1975年生まれ。慶応義塾大学大学院社会学研究科修士課程卒業。2000年、フォンドットコムジャパン(現オープンウェー

ブ)に入社。携帯電話向けコンテンツディベロッパーマーケティングに従事した。2001年にオープンサイト運営者として独立、後に事業売却。2003年、ビットレイティングス株式会社を設立。モバイルポータルサイト「F★ROUTE」(エフルート)を中心にモバイルサイトのアグリゲーター業務を行う。

著書に「ケータイ・ビジネス 成功の新常識」がある。


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