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IE 8 β2を試してみた――プライバシー機能に進歩あり(1/5 ページ)

» 2008年08月29日 15時59分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 Internet Explorer(IE)は市場を独占してきたにもかかわらず、多くの点で取り残されたブラウザだった。IE 6は賞味期限切れ後もかなり長く続いたし、IE 7はよく言ってもマイナーアップグレードにすぎず、Microsoftはいまだにライバルに後れを取っている。

 しかしInternet Explorer 8 β2をテストした第一印象では、Microsoftは1995年にIE 5をリリースして以来初めて、大幅に機能強化したバージョンのブラウザをリリースしようとしているのかもしれない。IE 8 β2には使い勝手、安定性、セキュリティ強化のための新機能が多数盛り込まれている。新機能は基本的にFirefoxやOperaに追い付くことを狙ったものが多いが、ブラウザとしてMicrosoft独自のイノベーションが見られるものも実際に幾つかある。

 もちろんこれはあくまでもβ版だという認識が必要だ。IE 8 β2を使ってみて最初の数日で非常に不安定であることが分かり(ただし新しいタブ機能とサイト復旧機能は非常に優秀で頻繁に利用した)、IE 7互換モードでないと閲覧できないWebサイトも驚くほど多かった。このためβ版の試用をお勧めできるのはWeb開発者と技術に興味のあるユーザーに限られ、仕事などで安定したブラウザが必要な場合は手を出さない方がいい。

 IE 8 β2で最も重要な新機能はWebプライバシー分野にある。新機能の「InPrivate Browsing」モードでは別のセッションが立ち上がり、cookieや履歴などの個人情報は保存されない。このセッション中はアドレスバーにInPrivateのロゴが表示される。InPrivate Browsingを中止するためにはこの専用ウィンドウを閉じるだけでいい(つまり私用と公用の複数のセッションを同時に実行できる)。

 後からWeb閲覧の痕跡を消去したくなった場合、IE 8 β2の「Delete Browsing History」(閲覧履歴消去)機能には、ユーザーのお気に入り一覧にあるサイトのデータを削除しないオプションが付いている。これは方向性としては結構だが、どのサイトのデータを取っておくかをさらにきめ細かく手作業で設定できるモードが欲しい。自分のお気に入りにあるサイトだからといって、閲覧セッションのデータを取っておきたいとは限らない。

 InPrivate Browsingと関連した新機能として、「InPrivate Blocking」という機能もある。この機能には、サードパーティーサイトとユーザーが閲覧しているサイトとの間でのデータ受け渡しをユーザーが阻止できるようにする狙いがある。こうした技術では、場合によっては複数のサイトからのデータを統合してユーザーの行動履歴をまとめ上げることができてしまうからだ。この機能はまず、データ収集を阻止しない学習モードで動作し、その後、あまりに頻繁なサードパーティーによるデータ収集をブロックする。ユーザーが手作業で特定サイトの遮断・許可を設定したり、遮断するサイトの一覧をインポートすることも可能だ。

 こうしたIE 8 β2のプライバシー機能は必ずしも独自のものではない。Firefoxなどほかのブラウザでも同じレベルの保護を実施できるサードパーティーのアプリケーションや拡張機能は存在する。しかしMicrosoftが今回のβで歩み始めた方向性に沿って進めば、IE 8はブラウザに組み込まれたものとして最高のプライバシー機能を提供することになるだろう。

 もちろん、IE 8 β2の新機能がすべてプライバシー関連というわけではない。ユーザーのWeb閲覧方法やサイトとのかかわり方に関係した新機能もある。さらにユニークなのは「アクセラレータ」という新機能だ(β1ではActivitiesと呼ばれていた)。アクセラレータのアイコンはユーザーがWebページのテキストを選択するたびに起動する(アイコンは選択したテキストの隣に現れる)。アクセラレータのアイコンをクリックするか右クリックすると、検索、翻訳、地図検索など多数の動作が実行でき、しかも新しいWebページを立ち上げるのではなく小さなポップアップウィンドウにその内容が表示される。アクセラレータは非常に役立つとわたしは感じた。なぜならこの技術は開発者に公開されており、どんなサイトや企業でもカスタム版のアクセラレータを作成できるからだ。

 また、「Web Slice」という新機能ではサイトや開発者がカスタム版のウィジェットを作成し、ブラウザのツールバーに追加して、自分たちのサイトの情報やデータに手軽にアクセスしてもらえるようにできる。

 タブ機能をサポートしたのはブラウザの中でIEが一番遅かったが、IE 8には閲覧中のタブの使い勝手向上を図る工夫が幾つか盛り込まれている。IE 8の優れた新機能の1つとして、同じWebサイトから開いたタブをすべてグループごとに色分けし、関連するタブグループを見分けやすくした。さらに、IE 8 β2で新しいタブを開くと空白ページではなく、InPrivate Browsing、アクセラレータ、履歴、クリップボード情報など一連の選択肢が表示される。

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