「すべてをメールに一元化」前ライブドア代表取締役・山崎徳之さん達人の仕事術

PCで使うアプリケーションの8割はメール。仕事のタスクはすべてメールで管理する。しかもPCの中にはデータを置かず、サーバに保存。ネットワークを最大限活用する山崎さんに、仕事術を聞いた。

» 2006年07月27日 02時38分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 「15年前に読んだ、『カッコウはコンピュータに卵を産む』に一番影響を受けました。これでネットワークに興味を持ったんですね」──。

 事件後のライブドア代表取締役を、2006年2月から6月まで務めた山崎徳之さん。SIPなどに造詣の深い、生粋の技術者でもある人物だ。ライブドア流、いやオン・ザ・エッヂ(ライブドアの前身)流とでも言うべき、山崎さんのITを活用した仕事術は、技術者の香りを漂わせつつ、これからのビジネスパーソンの仕事のやり方を予感させるものだ。

すべてをメールに一元化

 「メールでメモを取ります。メールの受信箱に入っているものが“自分のやること”。用があるときは自分にメールを出して、ここがゼロになったらやることがないという状態です」

 ほぼすべての作業をメールに集約してしまう。それが山崎流だ。PCで使うアプリケーションの8割はメール。残り2割がブラウザだという。6〜7年前からこのスタイルを続けている。

 自分でメールを使えない状況でも、できる限りメールですます。例えば「その件ちょっとメールしておいてもらいますか?」とお願いする。できる限り手間と時間をかけず、シンプルに仕事をするために生み出された方法だ。

 メモを取ることもほとんどない。Webのブックマークもメールに集約している。「ブックマークもしていないです。だいたい覚えますからね、URLを。最悪検索してしまえばいい。それでもまれにいいページを見つけて覚えておきたいときは、『このページを知っていると便利なんじゃないか』と思う人にURLをメールして、後で必要になったら自分の送信メールを検索します」

 メールを徹底活用していると自負する人は多いと思うが、ここまで仕事のベースツールとして使っている人はまれだろう。仕事の連絡先の管理も、基本的にはメールだ。

 「人の連絡先は管理しないです。すべてメールですね。Mew(後述)の場合、メール送信先をキャッシュしてくれるので、頭の数文字を入れて[Tab]を押せば補完してくれるのでほとんどはこれで事足ります」

「自分のPCに大事なデータは入れていない」

 メールに仕事を集約することのメリットは、ツールがシンプルになるだけではない。昨今、忙しく飛び回るビジネスパーソンの多くが、デスクトップPCではなくノートPCをメインマシンとしているが、PC内部にデータを入れておくのは紛失などの際のリスクが大きい。では、データはローカル(ノートPCのHDD)に置かず、すべてオンライン上に置いてしまってはどうだろう。

Mewの画面。画像などマルチメディア系ファイルが添付されたメールが届いたときは、Becky!でメールを開くのだという

 山崎さんが使っているメールソフトは「Mew」。一般にはあまり聞き慣れないソフトだが、実はUNIXのEmacs上で動くメールソフトだ。山崎さんは、WindowsまたはMacOSのターミナル上でEmacsを立ち上げてMewを使っている。ネットワークにアクセスしてメールを閲覧するため、メールはPCにダウンロードせず、オンライン上で読み書きするのが基本だ。

 “重要なデータはすべてオンラインで”──。そのメリットを山崎さんはこう話す。

 「どの環境で見ても同じ。そして自分のPCには大事なデータはほとんど入れていない。PCは、月に1回くらいフルフォーマットをかけて出荷状態に戻してしまう。そのときもバックアップを取るのは、パスワードくらい」

 山崎さんが普段使うPCは、「MacBook Pro」だが場合によってはパナソニックの「Let's note」も使う。データを基本的にオンライン上に置くため、どんなPCを使っても同じ環境で仕事ができる。ちなみにパスワード管理ソフトとして使っているのは「ロボフォーム」。Internet ExplorerやFirefoxと連携して、さまざまなサービスのパスワードを保存/入力してくれる。

 ブラウザは「Maxthon」(旧称MyIE2)を使っている。「IEエンジンだからということと、軽いから。それからロボフォームを使ってパスワード管理ができる。それからすごく気に入っているのは、[Ctrl]+[N]で新しいウインドウ(ブランクウインドウ)を開いて、「G」+検索語でGoogle検索ができる。[Y]+検索語ならYahoo!検索ができること」

普段持ち歩くもの。オンライン上で仕事をする山崎さんにとって、ネットワークケーブルは必須。ブランドにはこだわらないがUSBメモリも持ち歩く。いろいろなところに差しやすい細身のCrossのボールペンを愛用している

ネットワークの進化とともに歩んできた

 これまでを振り返ると、山崎さんは“コンピュータネットワーク”の進化とともに過ごしてきた。

 「15年前『カッコウはコンピュータに卵を産む』を読んでネットワークに興味を持ったんですね。ドイツのハッカーがアメリカの研究所に侵入するという話です。印象的だったのは家に帰って、家から研究所のマシンにログインして──というのが最初ピンとこなくて、そのあたりからネットワークに興味を持ったんです」

 10年くらい前になって、ようやくインターネットにアクセスできるようになった。たまたま大学の時に入った研究室が一番UNIXが豊富にある研究室で、そこでUNIXにたっぷり触れた。当時はUUCP接続だったという。その後は一環してネットワークに関わってきた。

 「ネットワーク接続は今後は上り速度が重要になってくると思っています。これからネットワークはクライアント/サーバよりもP2Pになってくる。自分から出るデータの帯域が太くなるときに、上りが太くないといけない」

 ライブドアを6月に退任後、新たにゼロスタートコミュニケーションズを設立した山崎さん。今後も提供するであろうインターネットを使ったサービスを楽しみにしたい。

お名前 山崎徳之(やまざき・のりゆき)
PC MacBook Pro
携帯電話/PDA(データ通信カードを含む) au WIN「W41SA」
デジタルカメラ なし
ブラウザ Firefox
収集ツール(RSSリーダーなど) -
メールクライアント Mew
インスタントメッセンジャー MSN/Skype
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) -
バックアップツール Rsync
検索サイト Google
Webメール -
ブログ -
SNS mixi, frepa
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影響を受けた人/本/Webサイト 『カッコウはコンピュータに卵を産む』
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