オフィス系文具通販“春の陣”――アスクル、たのめーる、カウネット週刊「仕事耕具」

各社がしのぎを削るオフィス系文具のオンライン通販事業。「値下げだけが強化策ではない」という。オンラインならではの強みを生かせるのだろうか。

» 2007年02月19日 23時10分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 プラスグループのアスクル、大塚商会のたのめーる、コクヨグループのカウネットらがしのぎを削るオフィス系文具のオンライン通販事業。2006年の売り上げは最大手のアスクルが1616億円、たのめーるが750億円、カウネットが480億円と、シェア上位の3社だけでも3000億円に迫る。業界全体では4000億円に達するという。

 法人向けオフィス系文具のオンライン通販というと、総務の購買担当者だけが関係のある話しのように思えるが、各社とも工夫を凝らしている。アスクル、たのめーる、カウネットともにカスタマイズ機能を用意しており、例えば、取りまとめ機能などを提供しているのだ。この取りまとめ機能とは、1つの企業に権限の異なるIDを付与するもの。発注権限のないIDを使って現場サイドがほしい製品をチェックし、最終的に総務部門が取りまとめて発注する仕組みである。現場スタッフに無用な製品を見せないようにするフィルタリング機能も備えているという。

 こういった仕組みを導入することで、現場に必要な製品と総務が発注する製品をすり合わせられる。オフィス関連製品の購買が効率的に行えるというわけだ。実際の店舗である文房具店が減少し続ける中、オフィス文具のオンライン通販は10%前後売り上げを伸ばしているという。「企業に納品していた文房具店が減少したことで、オンライン通販を利用する企業が増えた。また、従来は一般の小売店を利用していた中小企業が法人向けのオンライン通販を利用するケースも増加した」(アスクル)

アスクル

コクヨのカウネットは“反転攻勢”

 他社に先駆けて2月19日に2007年春夏物のカタログを発刊するのはコクヨグループのカウネット。全2万3200品番のうち2800品番を対象に平均7.4%の値下げを行った。2006年秋冬のカタログでアスクルが仕掛けた2000品番の値下げ攻勢に対して、「カウネットの反転攻勢」だと自信を見せる。

 定価の価格改定で値上げを余儀なくされる品番もある。例えば、原油価格の高騰によって値上げ圧力が強かったコピー用紙である。プリンタのトナーやクリアファイルに並ぶ売れ線商品だが、4月1日からは従来品を値上げする。だが、価格を“維持”した新製品を投入したのだ。

カウネット

 とはいえ、過度な値下げ合戦はしたくない。カウネットの“反転攻勢”を迎え撃つアスクルのカタログ(2月22日発行)では、2006年秋冬カタログでアピールした値下げ感は影をひそめる。裏写りしない両面印刷用のコピー用紙やパルプ100%のトイレットペーパーなど付加価値のある製品に関して期間限定の値下げは行うものの、前回ほどの値下げは行わない。

値下げだけが対策ではない

 「値下げが一定の評価を受けたことは事実」とアスクルも認める。ただし、強化策は値下げだけではないという。ポイントは、現実のカタログとインターネットの両面を活用することだ。小額製品の多い文具業界は、カタログの発行後に製品が発売されることも多い。現実のカタログに新しい製品を追加するのは難しいが、インターネットであれば簡単に追加できる。「きめ細かく情報を更新し、ニッチなニーズも拾い上げることこそが切り札」(アスクル)だというわけだ。

 大塚商会のたのめーるは、今週中にも新カタログを発表する。詳細は不明だが、商品価格については、やはり「他社の流れを検討する」とカウネットやアスクルの値下げに追随する姿勢を見せた。その上で、大塚商会のコピー機や複合機の営業をする際、たのめーるのIDを設定するなど「営業体制とたのめーるが連動していることが強み」とアピールする。大塚商会のシステム開発案件による受注は少なくない――というわけだ。

たのめーる

 法人向けということもあって、担当者以外は実感のわかないオフィス文具のオンライン通販だが、実際はお茶やカップラーメンなども購入が多いという。「文具にかかわらず、重いもの、かさばるものが売れる」(アスクル)。季節柄、チョコレートが売れたりもするなど、意外と身近に影響しているかもしれない。総務の購買担当者は各社の動きに注目だ。

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