27歳の小島杏奈は、CADデザイナーだった先輩社員の大熊誠一と高橋貴代美に誘われ、デザイン事務所を設立した。これまで使っていたパソコンが壊れたので、新しく営業用とデザイナー用のパソコンを購入しようとするが……。
「あ〜ん、またフリーズしたよぉ〜」。ちょっと高めのいわゆる“アニメ声”で、今日何度目かの文句をつぶやいたのは小島杏奈だ。
「もう新しいパソコンを買ったほうがいいよ。いまどきWindows Meを使って仕事なんかできないんだからさ」と答えたのは、大熊誠一である。その傍らで、我関せずとキーボードをバシバシ叩きまくっているのが高橋貴代美だ。
今年27歳になる杏奈は、CADデザイナーだった先輩社員の誠一と貴代美に誘われ、デザイン事務所を設立したばかり。パソコンの扱いに困るようでは、CADデザイナーが勤まるはずもなく、いろんな企業に出かけていって仕事をとってくる営業が杏奈の担当だ。
実家で使っていたノートパソコン――杏奈は“ぶーちゃん”と呼んでいた。なんでも無茶な操作でビープ音ばかり鳴るからだそうだ――で大丈夫と、勝手に納得して持ってきた杏奈だが、すでに何年も前の型落ちパソコンである。Bluetoothはもちろん無線LANさえ搭載されていない。有線のLANポートだって怪しいものだ。そんなパソコンと格闘していた杏奈だが何度かフリーズ、再起動を繰り返していくうちに、「ぶーちゃんが動かなくなったぁ〜」。どうやら完全に“沈黙”したらしい。
「だから言っただろ。新しいパソコン買えってさ」と誠一。むぅっとおちょぼ口で杏奈は反論した。「だって秋葉原とか行くのイヤだよ。この間もヘンな人たちに囲まれて写真撮られたし」。杏奈は148センチと身長こそ低いが、くりくりした瞳にメガネが可愛らしい。いわゆる“メガネっ娘”である。
「じゃあさ、通販にしたらいいじゃん」。誠一は、とりあえず通信販売なんだからダイレクトっぽいという理由で、「パソコン ダイレクト」というキーワードで検索するよう杏奈に伝え、自分のノートパソコンを渡した。ちなみに、誠一自身が探してあげないのはケチだからというわけではない。同僚の貴代美の手前、いつまでも杏奈にかかわっているわけにもいかないからだ。1週間後に大事なプレゼンテーションを控えているのも気になる。いそいそとデスクトップパソコンに向かう誠一であった。
杏奈はさっそく検索してみた。「パソコン ダイレクト」で最上位に表示されたのは「エプソンダイレクト」だ。アクセスしてみると、いくつかパソコンが表示された。思ったより種類は少ないようだ。メガネのずれを直しながらほっと安心のため息をついた。
都心にある「○●カメラ」のような大型量販店では、パソコンが売り場を埋め尽くすようにずらりと並んでいて、何を選んでいいか分からなくなってしまう。以前、休日に行ったときも選ぶ以前の段階で、大量のパソコンとひどい混雑に圧倒されてしまい、クルクルと目を回したあげく、へたっとその場に座り込んでしまった。ある意味、大量に陳列されたパソコンにはトラウマがあるのだ。
その点、エプソンダイレクトの画面はシンプル。営業担当の杏奈が欲しかったのは軽量タイプのノートパソコンも見つけやすい。頻繁に外出するので、バッテリの持ちがよく、通信手段が豊富なものが狙い目だ。ざっと探してみると、「Endeavor NA702」「Endeavor NA102」あたりが候補に入りそう。「よし、やるぞー」。スーツの袖をまくりながら、柄にもなく気合の入る杏奈だった。
ベース機種 | Endeavor NA702 | Endeavor NA102 |
---|---|---|
タイプ | A4モバイルパソコン | B5モバイルパソコン |
液晶サイズ(最大) | 14.1インチ/1400×1050ドット | 12.1インチ/1024×768ドット |
大きさ (幅×奥行き×高さ) |
315×260×23.4〜38.6ミリ | 281×237×32〜35ミリ |
重さ (光学ドライブありの構成) |
約2.1キロ | 約1.2キロ |
最小構成価格 | 11万9700円 | 12万9780円 |
「価格からいったらNA702がお買い得だけど、大きさならNA102かなぁ。うーん、迷う」と、2台のパソコンを比較できる「詳細比較」機能を使ってあれこれ迷う杏奈。すでにお昼も過ぎたが、なんだか楽しそうだ。そんな杏奈に「BTOって知ってる?」と貴代美が声を掛けてきた。
「え、ええと、BTOって……」。言葉に詰まる杏奈をわき目に、貴代美がマウスを取り上げる。「好きなパーツを組み合わせてオリジナルのパソコンを注文できるのよ、エプソンダイレクト」と続けながら、パーツを次々と組み合わせる。
「杏奈の担当は営業だから、いつも持ち歩けるほうがいいわね。じゃあなるべく軽いNA102ね」「無線LANやBluetoothとか通信機能も充実したほうがいいでしょ」「Officeもつけちゃおう」。優柔不断な杏奈はいつも貴代美に助けてもらっているから、「あーん、私のパソコンなのに……」と思っていても口に出せない。
と、いくつか画面が移り変わるうちに注文の確定画面になった。後ろから誠一が「お、決まった?」と顔をのぞかせる。「へえ、結構いいスペックじゃん」「当たり前よ、私が選んだんだから。ね、杏奈」「えへへ、そうかなぁ」。ほとんど全てを貴代美に決められてしまい、ちょっと泣きそうになっていた杏奈も、誠一に誉められていることが分かると、ぱぁっと晴れやかな顔になる。「貴代美の選んだパソコンも好きになれそう」なんて思ってしまうのだから現金なものだ。
ちなみに選んだパソコンは、Endeavor NA102。バッテリの持ち時間(軽量バッテリで約5.6時間)も考えてCore Solo U1400(1.2GHz)を選んだ。メモリは最大の1.5Gバイトを搭載。無線LANやBluetoothも使えるようにした。「これなら杏奈も仕事ができない理由をパソコンのせいにできないな」と、杏奈をからかう誠一だった。
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