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» 2007年12月26日 09時00分 UPDATE

樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」:年末年始は2人対戦ゲームでビジネス感覚を磨け

「花札しない?」とヨメサンが言ったのは、スコットランドを旅しているときだった。それ以来、150回以上の対戦を重ねている。この2人対戦がビジネス感覚を鋭くするのだ。

[樋口健夫,ITmedia]

 「花札しない?」とヨメサンが筆者に言ったのは、絵のように美しいスコットランドの風景を、鈍行列車の窓から見ていた時だった。「ええっ、この景色を見に来たんだぞ」「南ドイツから連続30時間も黙って、列車の旅に付き合ってあげてるじゃない。花札やったっていいでしょう」

2002年からの勝負は150回を超えた

 こうして列車の小さな机で、樋口夫妻2人対戦の花札勝負が始まった。当初は外の景色に未練があった筆者は、どちらかというと花札よりも外の景色に見とれていた。それが原因になったかどうか分からないが、列車の中でのヨメサンはツキにツイていた。どんどん勝ち進む。一方、筆者は連敗に次ぐ連敗。400点ほどの差が付いて、「おいおい、これは1点、いくらの計算なんだ」「1点1億ドルよ」「なに、1億ドルだと。俺は400億ドルの負けか。ひどいなあ」

 だいたいヨメサンは、高校の時から優等生だった。旅人Bが先に出発した旅人Aに追いつくまでにかかる時間などを求める「旅人算」といった和算が得意ということをずっと鼻にかけている。花札のような戦略とツキが必要なゲームで、小中学校を劣等生で通した筆者に負けるはずがないと絶対の確信を持っているのだ。

 列車は、ほぼ夜中に終点に到着して宿屋に入った。筆者は旅の疲れや、大負けしたこともあり、すぐにベッドにもぐりこんだら「さっきの(花札の)続きをしようよ」とヨメサン。ツキに乗じて攻めてくる。

 筆者もなんだか対抗心が燃えて、「分かった。やってやろうじゃないか」と答えてしまった。スコットランドの宿屋のベッドの上で、朝方まで花札を続ける2人。気付いたら、400億ドルの負けをひっくり返した筆者が、700億ドル勝ってしまった。奇跡の挽回だ。さっきの勢いはどこへいったのか、ヨメサンは悔しさで震えている。「どうしてあなたに負けるのかしら。おかしい」としきり。

 そんなことがあって以来、筆者たち夫婦はちょっと時間があれば、どこでも花札で勝負する。飛行機や列車はもちろん、カリブ海でのクルーズ、シカゴのオヘア空港の待合い室なども花札で勝負した。花札(とPC)用の携帯デスクも持ち歩くほどだ。花札も特製皮ケースに入れている。

 2002年から150回ほどの勝負して、結果は全部点数表に記録している。初勝負以来、ヨメサンの“国際収支”は悪化の一途だった。一時は、何と2400億ドルの赤字。最近は、徐々にヨメサンが取り戻しつつあるが、それでもまだ2200億ドルのマイナスなのだ。

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2人対戦ゲームはビジネスマインドに関係している

 5年間にわたる数百回の対戦をしていて感じたのは、「2人対戦ゲームはビジネスマインドに関係しているのではないか」ということだ。

 花札のような2人対戦ゲームは、結構対戦の展開スピードが早い。7人や8人のゲームでは、待ち時間が長くミカンを食べたりするので間延びしてしまう。花札に限らず2人対戦ゲームでは、こちらの負けはそのまま相手の勝ちだから、本能的な闘う気力が湧いてくる。ヨメサンも筆者も本性を現わして闘っているのだ。

 ほんのちょっとした動きで相手の心理を読むところなんかは、まさにビジネス交渉と同じなのだ。2人対戦ゲームは、間違いなくビジネストレーニングになる。ビジネスは人を相手にしていることだ。この年末から正月にかけての休みは、生身の人間と競い合うことでビジネス感覚を養ってはどうだろうか。花札、将棋、オセロ、ウノ、シンペイなど2人対戦ゲームはいずれも面白い。

 夫婦や恋人の間で徹底的に勝負してみよう。勝者が敗者に優越感を感じた直後、「ああ、この人がいなければ、この優越感は味わえないのだ」という、曲折した思いやりが出てくる。「このお客がいればこそ……」と、それがビジネスにも見事に生きてくるのだ。それに、長く勝負を繰り返していると、「勝った、負けた」ということを超越して、一種の信頼関係が生まれる。まさに人生の相互の信頼感を構築するのだ。

 ただ、恋人同士で勝負する時には注意してほしい。あからさまに負けた相手をバカにしてはいけない。それ以上に、絶対にやってはいけないのが、相手にわざと勝たせるような姑息な手段だ。相手を侮辱していることになる。ビジネスも同じだと思う。2人の対戦の時はどうどうと闘いたまえ。

 子供がいない家族や、団塊の世代で子供が大きくなり、夫婦だけという家庭では、2人対戦ゲームは最適の刺激と精神的支えになる。ストレスを解消して、生きる気力を作るのだ。

 正月の我家では息子たち家族も集まる。PCを利用した最新のボードゲーム「人生ゲーム」や「モノポリー」「ウノアタック」なども、ほとんどビジネスゲームだ。正月を過ごしたら、正月ボケになったというのは当たり前すぎて面白くない。正月を過ごしたら、ビジネス感覚がキリッとなって、思いやりも増して、人間味が深くなるというのはどうだろうか。

樋口健夫オススメ! 2人対戦ゲーム
花札 もっともオススメ。点数記録が残しやすく、コンパクトなので持ち運びも簡単。外国でも珍しがられる Amazon.co.jpでは1900円(「花札 大統領」)
トランプ ごく一般的。「スピード」「ページワン」など、点数を付けられる遊び方を探す 同950円(NAPトランプ1051赤)
オセロ 勝敗が着いた時の黒白の差を点数にするといい 同609円(ポケッタブル パワーオセロ)
ウノ 勝ち負けだけの勝負になりがち。点数をつけるなら、1位が決まった時点で、残った手札を元に点数計算してもいい 同1029円(ウノカードゲーム)

今回の教訓

「今日の食事は誰のごちそうか」といった盛り上がるキーワードを考えるのもいいだろう。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

st_pi00.jpg 好評販売中の「ポケット・アイデアマラソン手帳'08」。1年間に1000個のアイデアを書きとめよう

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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