「二者択一」化して行動を後押しする──『扉の法則』 5分で読むビジネス書

いわゆる自己啓発書をバカにするなかれ。評価の高い書籍の中には、思わず行動を起こしたくなるような仕掛けがちりばめられている。本書もそんな一冊だ。

» 2008年02月13日 00時34分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

ジェームズ・スベンソン『扉の法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

 まず、夢を見よう。それがすべての出発点だ。そして自分の力を信じ、勇気を出し、実行に移そう。

 夢とは、まだ実現していない目標のことである。大切なのは、その実現のために最善を尽くして社会に貢献するという高い志を持つことだ。

 世の中で最も残念な言葉は、「やってみたらできたかもしれない」である。それに対し世の中で最も感動的な言葉は、「やってみたらできた」である。

 さて、あなたはどちらを選ぶだろうか?(p.13)


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 いわゆる自己啓発書であるが、真新しいところは特にない。この類に明るい読者であれば、既知の内容ばかりかもしれない。強いていえば随所に著名人の言葉を引きながら説得力を加えているところに特徴が見いだせる。

 しかし、読み進めていくうちに本書には思わず行動を起こしたくなるような仕掛けがちりばめられていることに気づく。冒頭で引用した個所でも使われている、「あなたはどちらを選ぶだろうか?」と読者に「二者択一」を迫る手法はその1つだ。

 具体的にどうすれば行動すればいいかを示すのではなく、行動しなかった場合にどのような災難が降りかかってくるのかを、行動した場合に得られるメリットと対比させている。

 例えば、次のような具合だ。

 同じ能力を持つ二人の人間が、同じ悪条件の下で同じ課題に直面したとする。一人はそれができる理由を考え、積極的に行動し、それをなしとげる。もう一人はそれができない理由を考え、行動を起こさず、結局、何もなしとげない。


 このように、コントラストがはっきり示されれば、自分の立ち位置をつかみやすい。両極端のどのあたりに自分が位置するのかを知ることで、現在地点から望ましいポイントまでの距離をつかめる。つまり、行動を起こすにあたっての見通しが立つわけだ。

 次のような二者択一を提示されれば、おのずと答えは決まってくるだろう。

 すべての人は、ふたつの苦しみのどちらかに耐えなければならない。すなわち、自己規律の苦しみか後悔の苦しみである。その違いは、自己規律の苦しみは数グラムの重さしかないが、後悔の苦しみは数トンの重さがあるということだ。


 友人はできては消えるが、敵は消えずに増えていく。(中略)味方を増やそう。敵はあなたの足を引っぱろうとするが、味方はあなたに協力して成功の手助けをしてくれる。


BOOK DATA
タイトル: 扉の法則
著者: ジェームズ・スベンソン著、弓場 隆訳
出版元: ディスカヴァー・トゥエンティワン刊
価格: 1365円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: そう遠くない未来に「やってみたらできた」と言いたい人

 知識は「知っているか、知らないか」のどちらかに分けられるが、これとは別に「身につけているか、単に知っているだけか」という分け方もある。いうまでもなく、知識を活用しようとするなら、知ったうえで、これを身につける必要がある。身につけるとは、その知識によって行動を変えるということだ。

 それゆえ、本書に限らず、ビジネス書を読むときは、そこに「知らないこと」を探すのではなく、自分が実践できていないことを探すことを心掛けたい。知ることよりも、できるようになることを志向するためだ。

 このように、あらゆる課題について採りうる態度を2つ挙げ、これらを対比させる、すなわち「二者択一」化することによって、どちらを選ぶべきかが浮き彫りになると同時に、自家発電的に行動の動機づけが得られるようになるだろう。

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