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» 2008年03月12日 16時40分 UPDATE

SECURITY SHOW 2008:犯罪者vs.セキュリティ。いたちごっこは続くよどこまでも

次々に撃退グッズを世に送り出しては、防犯策を打ち出すセキュリティ業界。SECURITY SHOW 2008に出品している製品の中に、ドロボーを煙に巻くもの、放火魔の野望の火を消すものなどロングセラー製品を見つけた。これらが売れている意外な背景とは――? そこにはざまざまなドラマが渦巻いていた。

[豊島美幸,ITmedia]

 「私たちの仕事は常にいたちごっこ。終わりがないんですよね」。セキュリティハウスの説明員は、先日紹介した「ネットランチャー」をはじめ、主力製品を一通り説明し終えた直後、あきらめとも苦笑ともつかない顔でそう漏らす。

 確かに犯罪白書を見ても、戦後60年強、1度として刑法犯の認知件数ゼロの年はない。犯罪者がいれば、当然、犯罪を防ごうと知恵を絞る者が出てくる。すると犯罪者はさらなる知恵を絞り――永遠の攻防戦と相成るわけだ。

 そんな中、今のところ被害を未然に防げたり最小限に食い止めることができているというロングセラー製品が2点ある。説明員の言葉と併せて見ていこう。

放火魔の野望の炎を消す「炎センサー」

mt_otento1.jpg 室内用センサー。寸法は120×45ミリ(外径×高さ)
mt_otento2.jpg 室外でも設置可能な防雨構造のセンサー。寸法は115×172×289ミリ(幅×高さ×奥行き)

 最初に紹介するのは竹中エンジニアリングの「炎センサー」。展示されていたのは、室外でも使えるセンサー「FS-6000A」(5万2290円)と、室内のみで使用する「FS-3100」(3万6540円)。室内用センサーは、同じような形状のセンサーをオフィスビルなどのトイレで見かける機会も多いだろう。

 火災報知器といえば、消防法の一部改正により住宅用火災報知器の設置が6月から義務づけられることは、もうご存じだろうか。消防庁の最新データが示すように、住宅火災による死亡原因の1位は逃げ遅れで、そのうち65歳以上が6割にも上ることが改正を後押しした。

 家庭用の検知方式は2種類ある。まず発光ダイオードが発する光が、報知器内に入ってくる煙の粒子で屈折するのを利用した「煙式」と呼ばれるもの。これは煙が上がる頻度が多いキッチンなどには不向きで、この場合は気温の上昇を検知する「熱式」というものが向いている。

 ただ「煙式」や「熱式」は、どちらも煙が実際に上がっている場所、温度上昇している狭いエリア内でしか反応しない。だからこそ、部屋ごとの設置が義務づけられた。

 一方、公共施設などで使われることの多い「炎センサー」は、火災検知の方法がこれら住宅用とは異なる。炎には紫外線が含まれており、このセンサーは微量の紫外線に素早く感応し、警報が鳴る。鳴り始めるタイミングは、紫外線の連続検知時間に連動。設置環境に応じて1秒にしたり6秒にしたりと、施工業者がセンサー設置時に調整する。

 ちなみに、室内より室外に設置する場合のほうが、反応するまでの時間は長めに設定するという。これは外のほうが室内より誤検出が想定できるケースが多いため。紫外線は太陽光にも含まれているし、雨後の高圧線からの放電時や、電車走行時に火花に反応してしまうこともある。1キロ離れた地点で、電車の火花を検知した――というケースまであり、このときは設置角度を変えることで解決した。

 つまり設置する環境によって検出時間や設置角度を変えるなどして工夫。「誤検出を数パーセントに抑えている」という。

 「FS-6000A」「FS-3100」とも、10メートル以内の約7センチの炎を検知する商品仕様だが、実際どれくらいで反応するのだろう。説明員が検知器から数メートル離れた地点で、実際にライターをつける。するとライターから2センチ程度の炎が上がると同時に、警報音が鳴った。ちなみに警報音のほか、「そこは火気厳禁です」など音声を設定することもできる。

 つまり「炎センサー」は、住宅用のものでは見逃してしまう、小さな炎も逃さないのが大きな特徴。どういった用途に使われているのか。「タバコを壁にこすりつけて消す人がいるんですよね。そこから火災になるケースがもっとも多い」と、説明員。

 次が放火。特にマンションやスーパーマーケットなどのゴミ捨て場に火を放つことが多い。スーパーの場合は、「返品をしようとしたところ断られたりして、お客さんが逆恨みして放火するケースが後を絶たない」という。なんともやるせない話だ。

 こうした現場の声を裏付けるように、消防庁のデータによれば、火災の出火原因は「放火」「放火の疑い」を併せて20%を占めている。数値データを採っているわけではいないが、「炎センサー」によりボヤで収まったという現場の声をよく聞くという。

 また、同社が京都にあるという土地柄か、このセンサーは山寺でも活躍している。読経をあげるときに使うロウソクからの引火や、境内で暖をとろうとする人々が枯れ木を集めて火を起こし、それが建物に飛び火してしまう――などという事故を未然に防ぎ、国の重要文化財を守っているのだ。

 

ドロボーを煙に巻く「フォグガードS」

mt_otento3.jpg 真っ白い煙を噴射開始

 つづいて「どんなに警報がうるさく鳴っても、ヤツらには関係ないんです。“目的達成”までひるまないですから」と、説明員。目的とは窃盗だ。ドロボーたちが窃盗するものは貴金属類。次に紹介する製品は、宝石店からの引き合いが圧倒的に高いという。

 ずぶといドロボーに足止めを食らわすのは、竹中エンジニアリングの「フォグガードS」。Sは煙を表すSmokeの頭文字で、ほかにMやLサイズがあるわけでない。340×400×163ミリ(幅×縦×奥行き)で重さは約13キログラムのワンサイズ。値段は32万5500円。


噴射時間 有効容積
10秒 25立方メートル(約6畳)
20秒 50立方メートル(約12畳)
30秒 75立方メートル(約18畳)
40秒 100立方メートル(約24畳)

 Sの示すとおり、煙を噴射して“敵”の視界を遮断。部屋を煙で満たし、立ち往生させる。毎秒2.5ミリリットルのグリコール水溶液の煙を噴射して、視界も“濃い”真っ白に変えてしまう。グリコールは人畜無害でOA機器や備品にも影響がなく、跡も残らない。また、噴射時間は表のように4段階に分け設定可能だ。本体についている侵入検知センサーに反応して、設定した時間噴射する。

 しかし単なる煙幕が大の大人を立ち往生させ、“一撃”食らわすことなど本当にできるのか――。そう思う人もいるだろう。ところが説明員は、「どんなに神経が太くても、人間、目の前の視界が突然真っ白になったら、全く動けなくなるもんなんですよ」と、キッパリ。

 さらに彼は、かけていた眼鏡を取り外し、手のひらを両目の真ん前に持ってくると、「社内の食堂でも実験をしましたが、この手のひらも全く見えませんでした」と、胸を張る。確かに目を閉じてみれば、途端にひるんで一歩も足を踏み出せなくなるに違いない。目を閉じると世界は黒いが、白い世界も色が違うだけで、感覚は同じか。

 さて、「フォグガードS」が世に出始めたのは約10年前。ちょうど窃盗団や、壁を壊して侵入するという“爆窃団”組織が台頭してきたころだ。ここ1年は、さらに計画的犯行を企てる“ウルトラ窃盗団”なる手合いが出てきているという。彼らは“ターゲット”の警報が鳴ってから何分で人が駆けつけるかを、あらかじめ下調べしてたたき出す。そして音が鳴ってから人が駆けつけるまでのわずかなスキに盗めるだけ盗む。

 1990年代以前は、物音を立てずにひっそり盗むドロボーが主流。だから警報器は立派に効力を発揮していた。ところが今や、こうした従来のドロボーは姿を消した。警報は鳴って当たり前、全く動じない“新しいドロボー”たちが幅を利かせている。

 警報装置を破壊し、ショーケースを割り……と、つつがなく進み、“本仕事”にとりかかろうとしたところで、いきなり煙がモクモクと上がる。瞬く間に視界をシャットアウトされた彼らは、肝心の仕事をしそこね退散する。

 警報器とショーケースの残がいと、無事に商品が残っている店内の状況からは、こうした犯人たちの足跡を推しはかることができる。そして“ターゲット”にされたものの、煙に巻いて商品を守り抜くことができた“リピーター”は、「補充用噴射液」のみ買い求めるのだという。このリフィル500ミリリットル入りで、値段は8400円。

 紫外線を使った炎センサーとグリコールを使った煙噴射マシンは、今のところ一定の効果を上げているようだ。しかし――「いたちごっこは終わらない」。説明員のこの発言が、会場を後にしてもなぜか筆者の頭の中でこだましていた。

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