企業生命を奪いかねないのがリスク管理。企業にとって、今やリスク管理は重要度が増す一方だ。でもこの言葉、後ろから読むとたちまち「クスリ」に変身するのだ。リスク管理のあり方について、企業を取り巻く現状から見ていこう。
内部告発で不祥事発覚――なんて、もう珍しくはない。
一昔前と違い、今は組織ぐるみの偽装や横領、個人情報漏えいなど、企業不祥事が明るみになりやすい“ガラス張りの社会”化が進んでいる。企業の責任を強化し、消費者を保護する流れは法律整備からも分かる。ごく一部を表にしてみた。
改正または新設年月 | 法律(通称)または制度 |
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1993年10月(改) | 株主代表訴訟制度 |
1995年7月(新) | PL(製造物責任)法 |
2004年11月(改) | 訪問販売法 |
2005年4月(新) | 個人情報保護法 |
2006年1月(改) | 独禁法 |
2006年5月(新) | 新会社法 |
2006年4月(新) | 公益通報者保護法 |
2007年5月(新) | 消費者生活用品安全法 |
2008年4月(改) | 男女雇用機会均等法 |
2008年4月(新) | 金融商品取引法(日本版SOX法) |
これだけあってもほん一部である。企業責任が重くなったぶん、ひとたび足をすくわれると、対処によっては破たんに追い込まれるほど、企業ダメージは大きい場合もある。このことは、老舗料亭など最近の不祥事からも明々白々だ。
企業のリスク管理の歴史は、第一次世界大戦後の1920年代のドイツに始まると、浦嶋繁樹(NPO法人日本リスクマネージャー&コンサルタント協会専務理事)は言う。
敗戦国ドイツを襲ったハイパーインフレ下で、企業防衛の経営管理ノウハウとして登場したという説と、1930年代、世界恐慌下で米国が企業防衛としてリスク管理の概念が誕生し、発展を遂げたという説がある。いずれにせよ、不況下でリスク管理の概念は誕生した。
1960年代にはケネディ大統領が打ち出した「消費者の権利」を機に消費者重視の社会へと突入する。1970年代にはベトナム戦争敗北やオイルショックによる不況のもと、賠償事件が急増した。そのため企業責任を強化する法整備された。
1980年代のレーガン大統領時代には、規制緩和による金融の自由化で大競争時代へ、続いて1990年代のクリントン大統領時代には、IT革命と会計ビッグバンによる国際会計基準が導入された。
さて、そこで日本だ。1990年代には細川首相が「生活者優先」を掲げ、消費者の時代に突入した。バブル崩壊後の2000年代には、国の借金を返そうと小泉首相が「官から民」と提唱。グローバル企業の自由競争と「小さな政府」化が進んでいる。浦嶋氏は、海外からやってきたグローバル化の波を「黒船の再来」と分析する。
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