その2 事業撤退の敗因は?ビジネス力1分間トレーニング

安田電気では、携帯電話の新規事業を始めました。ですが3年後、赤字のたれ流しをこれ以上放置できないと、携帯電話の事業撤退を余儀なくされました。さて、何が悪かったのでしょうか?

» 2008年08月07日 08時30分 公開
[西村克己,ITmedia]

Question

 安田電気の経営企画室では、携帯電話の新規事業を発案しました。携帯電話はすでに飽和状態といわれていますが、アジア諸国などの海外市場を考えると、まだまだ高い成長率が見込めるというのです。

 経営企画室の提案に乗った安田社長は、携帯電話の新規事業の推進を意思決定しました。そして3年後、赤字のたれ流しをこれ以上放置できないと、携帯電話の事業撤退を余儀なくされました。

 さて、何が悪かったのでしょうか?(複数回答あり)

  1. 携帯電話分野での技術力が不十分だった
  2. 投資対効果の検証が不十分だった
  3. 大規模投資が必要なため資金調達に限界があった
  4. 安田電気は運が悪かった

Answer

今回の問題は『論理力1分間トレーニング』の10問目から出題

 重複はムダや混乱が発生しますが、モレがあると検討不足になります。(1)の技術力が不十分だったことも一理あるかもしれません。技術不足で競争力が維持できなかったのかもしれません。(2)の投資対効果の検証が不十分、(3)の資金調達に限界があったのかもしれません。(4)の運が悪かったという運のせいにするのは責任回避です。回答例は(1)(2)(3)です。

解説:「考え不足でした」――思考のモレをなくそう

 モレがあると、論理思考の障害になります。たとえば、新規事業をやるべきだと、いい面ばかりを主張して相手が納得しかけたとします。ところが、「リスクについてはどう考えていますか?」という質問が来て「全く考えていません」と回答したらどうでしょうか。モレがあると、十分に検討されていないのではないかという不安がよぎるでしょう。

 また、モレに気がつかないとチャンスを失うことがあります。視野が狭くなって目先のことしか見る余裕がないと、自分の後ろで発生していることを見過ごしてしまいます。たとえば、今日の10円を儲けるために一所懸命努力しているときに、すぐ後ろにあるビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。また、日本市場だけに固執して、急成長している世界市場に目を向けなければ、チャンスを逃してしまうかもしれません。

 分かっていて、リスクが高いとか、タイミングが早いなどの理由で無視するのであれば、これは優先順位の問題です。しかし全く知らなくて無視すればチャンスを失います。

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著者紹介 西村克己(にしむら・かつみ)

 岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT(技術経営)、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。

 主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』(日本実業出版社)、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』(中経出版)、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』(PHP研究所)、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』(東洋経済新報社)、『脳を鍛えるやさしいパズル』(成美出版)など、約60冊。



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