その11 100億円のM&Aをどうするか?ビジネス力1分間トレーニング

あなたの会社ではある企業を買収するためにM&Aの検討を進めています。社内では賛成派と反対派が対立し、緊張した雰囲気。買収金額は100億円と試算されています。さて、どう判断すればいいでしょうか?

» 2008年09月11日 08時30分 公開
[西村克己,ITmedia]

Question

 桜井商事では、アパレル事業強化のため、原田衣料を買収するかどうかの検討を進めています。社内では賛成派と反対派が対立し、緊張した雰囲気です。買収金額は100億円と試算されています。

 さて、どう判断すればいいでしょうか?(複数回答可)

  1. 世の中のM&Aの流れからして買収すべきである
  2. ブームに惑わされないで買収は中止すべきだ
  3. 100億円の投資を買収以外についても検討すべき
  4. 自社の戦略に照らし合わせて判断すべきだ

Answer

今回の問題は『問題解決力1分間トレーニング』の18問目から出題

 買収するか、買収しないかの議論ではなく、そもそも会社の投資戦略や多角化戦略をどうするかを明確にしてくべきでしょう。設備投資、販売や生産拠点、新規事業をどうするのかなど、全社の戦略の中で買収を考えるべきです。もしかしたら買収ではなく、100億円の設備投資の方が投資対効果が高いかもしれません。

 (1)の世の中のM&Aの流れのように、ブームで買収を決めるわけではありません。(2)のブームに惑わされないで買収は中止というのも、ブームを意識しすぎています。(3)の買収以外についても検討すべき、(4)の自社の戦略に照らし合わせて判断がおすすめでしょう。正答例は(3)(4)です。

解説:やるやらない議論から抜け出そう

 たまたま思いついたアイデアに固執して、周囲が見えなくなる人が意外に多いのではないでしょうか。また、思いつきで提案された経営課題を、やるやらない議論をすることが好きな人が多いようです。

 たまたま考えた1つの案に固執する前に、ちょっと立ち止まって、それ以外の可能性も考えておくことが、失敗しないための決断に重要です。たとえば新規事業を考えるのであれば、1案に固執しないで、もっと可能性を広げて、広範囲で探索してみてはいかがでしょうか。

 思いつきのアイデアを、やる・やらないの議論をしていても、偏った議論にしかなりません。「他にも解決策のアイデアはないか、代替案をいろいろ出してから絞り込む」ことが効果的です。これを、オプション思考といいます。オプション思考で視野を広げて、さまざまな代替案を作成してから、最も魅力的な解決策を決定することが効果的です。

著者紹介 西村克己(にしむら・かつみ)

 岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT(技術経営)、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。

 主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』(日本実業出版社)、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』(中経出版)、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』(PHP研究所)、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』(東洋経済新報社)、『脳を鍛えるやさしいパズル』(成美出版)など、約60冊。



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