ハーマンミラージャパンは、「体と脳を考えてデザインされた」というワーキングチェア「エンボディチェア(Embody Chair)」を発表した。「コンピュータの前に座る人向け」に、人間工学に基づいたさまざまな機能を搭載したという。
ハーマンミラージャパンは2月17日、体の自由な動きをサポートし、脳の活性化を促すというワーキングチェア「エンボディチェア(Embody Chair)」を発表した。発売は3月23日。ファブリック13色、ベース3種類、フレーム2種類の組み合わせから選択でき、価格は21万1050円〜25万3050円。
エンボディチェアは、コンピュータの前に座る人向けに設計されたワーキングチェア。高機能ワーキングチェアとして知られる「アーロンチェア」のデザイナー、故ビル・スタンフ氏と、事務所のパートナーだったジェフ・ウェバー氏によるデザインだ。特徴は、座った状態でも腕や肩、首などを自由に動かせるよう設計されていること。
「椅子メーカーがこんなことを言うのもなんだが、人間の体の仕組みを調べてみると“座ることは体に良くない”ということが分かった」(ハーマンミラージャパンの前澤恵子プロダクトマーケティングマネージャー)。これは、座ることで血流が悪くなり、体の一部に圧力が集中して負担がかかるため。「多くの椅子は、人が動くことを妨げるようにできている」
エンボディチェアは、長時間のデスクワークでも快適に作業できるよう、座ったままでも自由に体を動かせる“動ける椅子”であることを重視した。「体を動かすことで血流がよくなり、酸素をより多く体に取り入れられる。酸素によって脳の働きが活性化することで、クリエイティブなアイデアがわきやすくなる」(前澤氏)
背もたれと座面には、新開発の素材構造「ピクセル構造」を採用。「ピクセル状の細かいマトリクスが、体型や姿勢の変化を受け止め、体圧を均等に分散する」という。背もたれは2層、より大きな圧力がかかる座面は3層のピクセル構造になっており、「浮いているような感覚で座れる。他社の多機能チェアと比べて、エンボディチェアに座ると心拍数が低くなるというデータが出ている」(前澤氏)という。
表面の素材には、アーロンチェアなどに採用されているメッシュではなく、通気性の高いファブリック素材が使われている。背もたれの幅が狭いのは、腕の自由な動きを妨げないため。フレームがない構造で柔軟性のあるエッジのため、体重をそれほど預けなくても上半身が動きやすいという。
背もたれの傾きを背骨のS字カーブに合わせて調節できる「バックフィット調節」機能と、回転軸が座面と背もたれの2個所にあるリクライニング機構「エンボディチルト」で、肩甲骨付近と骨盤を支える。「深くリクライニングしたときも、浅めに座った時も、頭とコンピュータ画面の高さが変わらずに座れる」(前澤氏)。
背もたれに体を預け、さらに背中の上部に体重をかけるとさらに深くリクライニングできる「キッカー」機能も搭載。後ろに反るようにして、首や肩、腰椎をストレッチすることで、オフィスでも起こりうる「深部静脈血栓症」、いわゆるエコノミークラス症候群を防げるという。
3サイズを用意するアーロンチェアなどと違って、エンボディチェアは1サイズのみで、成人の98パーセンタイルの人(100人中、体重や身長などの小さな人から98番目に当たる人)にまで対応するという。また、座面の奥行きや高さ、アームレストの高さなども大腿部や腕の長さに合わせて細かく調節できる。「企業のファシリティマネージャーにとって、さまざまな体型に合わせられて1サイズというのは、管理がしやすいはず」(前澤氏)。
「そろそろアーロンを超えるようなものを出したかった」(ハーマンミラージャパンの松崎勉社長)。エンボディチェアの価格はアーロンチェア(定価15万〜20万円程度)より30%ほど高めで、同社の製品の中でも最も高価な価格帯に当たる。
「高価格帯のため、アーロンチェアほどマスには広がりづらい製品だと思うが、健康を重視していたり、知識創造の仕事に携わっている人たちには受け入れられると思う。メッシュではなくファブリックを使用し、本体カラーも豊富なため、デザイン上の理由でアーロンを選択しなかった人たちにも気に入っていただけるはず」(前澤氏)
「エンボディチェア」の製品名は、「これまでハーマンが蓄積してきたシーティングの知識を、すべて体現する(=embody)」という意味を込めたという。
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