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» 2009年06月04日 14時00分 UPDATE

樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」:樋口式営業ストーリーテラーの秘けつ――サウジアラビア編 (1/2)

「あそこに、ほら、ラクダが見えますよね。『ラクダの恨み』というのがありましてね」――そんな話で客を安心させていたサウジアラビア時代の筆者。ストーリーテラーたるべく研さんを積んでいたのである。

[樋口健夫,Business Media 誠]

 相手が客であっても、上司であっても、部下であっても、友達であっても、恋人(候補)であっても、家族であっても、心に響くストーリーテリングは付き合いを親密にする素晴らしい方法だ。もちろん営業に役立つことは間違いない。思い起こせば、筆者の執筆歴もストーリーテリングから入ったのである。

まずリラックス。そして笑わせる

 サウジアラビアに海外駐在している時、日本から出張してくるメーカーの担当者をいつもリヤドの国際空港に迎えにいった。サウジの空港の荷物検査は世界一厳しい。何時間もかかることがあり、外に出てくる時にはクタクタになっていて、「もうこんな厳しい検査の空港は2度と来たくない」と考え始めるほどである。このままでは、現地に良い印象を持たない恐れがある。

 空港の外で待つ筆者の顔を見ると、どの客もホッとした顔をする。冷房の効いた車に乗り込むと、「ああ、疲れました」と言う。

 筆者は小さなクールボックスに、冷たいおしぼりを用意し、冷えた麦茶を出す。車はすでに130キロほどの速度で、空港から市内への高速道路を突っ走っている。サウジを初めて訪問してきたお客は窓の外の砂漠を食い入るように見ている。遠くにラクダが見える。

 「あそこに、ほら、ラクダが見えますよね。『ラクダの恨み』というのがありましてね。ラクダは誰かにいじめられると、いつまでもその恨みを忘れないのだそうです。そしてすっかりと忘れたころに、後ろから静かに寄ってきて、お尻をガブッと噛みつくというのだそうです」と、サウジ人から聞いた話をする。客の顔に笑みが出る。ようやく落ち着いてくるのだ。

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Point 1

 ストーリーテラーの秘けつは、まず相手をリラックスさせること。続いて、ニコリと笑みを取ることだ。

Point 2

 珍しい話。面白い話、驚くような話で、引きつけていく。体験談や動物の話はウケる。


長い待ち時間はむしろチャンス

 サウジアラビア政府の役所で面談を待っている時間は、いつもすごく長かった。その間、連れて行った出張者も筆者も坐禅を組むわけにはいかない。長く待たされることになれていない出張者が閉口してしまうかもしれない。

 筆者はそんな待ち長い待ち時間を、退屈させないストーリーテリングで短く感じさせる方法を取った。楽しい時間や夢中になっている時間は、あっという間に過ぎてしまうという「体感時間加速法」である。

 このお客の待合室でのストーリーは、アラビア人との付き合い方や交渉術が中心だ。アラビア人の場合、いかに信用を得るのが難しいか――筆者の場合でも、サウジアラビアに来てから4年目になってようやくまともに話を聞いてくれるようになったことなどである。

 筆者は駐在していた国や国民の悪口を言ったことはない。日本からの出張者にその国と国民を好きになってもらい、理解を深めないと、仕事が取れないからなのだ。

Point 3

 実用的なこと、聞いておく価値のあること、聞いて得をしたと思ってもらうことを説明していく。


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