キヤノンから新たに登場したドキュメントスキャナ「imageFORMULA DR-C125」。この分野ではデファクトスタンダードにあたるPFUの「ScanSnap S1500」のライバルとなる本製品の徹底レビュー、後編である今回は各機能の詳細についてお届けする。
キヤノンマーケティングジャパンから新たに登場した「imageFORMULA DR-C125」(以下DR-C125)。前回は基本的な機能について、競合製品となるPFUの「ScanSnap S1500」との比較を中心に紹介した。今回はオプション機能などについて実際の使い勝手をもとに検証するとともに、購入動機として多いと考えられる「自炊」との相性について見ていこう。
まずは画質や速度など、ドキュメントスキャナとしての基本性能についてみていこう。「ありがちな疑問点とそれに対する回答」という一問一答形式でお送りする。
筆者が本の「自炊」でよく利用するパラメータにおける、読み取り速度の実測値は別掲の通り。カラーモードを「カラー」に固定した雑誌原稿では本製品のほうが高速だが、カラーモードを「自動判定」にした単行本原稿ではScanSnap S1500のほうがわずかながら速い。サンプルデータの数が少ないのはご容赦いただきたいが、ともあれ製品選択の決め手になるほどの極端な差はないように思える。
もっともこれはOCRオフの場合であり、OCRをオンにすると両製品の速度差が顕著になる。ScanSnapは読み取ったあとにOCR処理を行うため、OCRの処理時間がそのまま所要時間に加わるが、本製品はバックグラウンドでOCR処理が行われるため、OCRオフの状態に比べても所要時間はそれほど極端には変わらない。
これは同社のDR-150にも共通する特徴で「OCRにそれほど必要性は感じないけど、まあとりあえずオンにしておこう」といった使い方も現実味を帯びてくる。文字認識の精度もそこそこ高いので(後述)、OCRが必要なのであれば本製品のほうが有利だ。
いっぽうで「モアレ除去」などの一部オプションについては、処理速度に与える影響が大きい。今回試した限りでは、モアレ除去オンの状態で、そうでない状態の5倍以上もの時間がかかった。逆に「画像回転」や「カラードロップアウト」はほとんど影響しないなど、オプションによって差は顕著だ。スキャンと同時に処理するオプションは読み取り時間に直接影響する、ということだろう。
内容 | 詳細 | パラメータ | ScanSnap S1500 | DR-C125 |
---|---|---|---|---|
雑誌 | 表紙カラー/本文カラー、A4、100ページ | 300dpiカラー、向き補正なし、傾き補正あり、OCRなし | 3分28秒 | 2分33秒 |
300dpiカラー、向き補正なし、傾き補正あり、OCRあり | 8分51秒 | 3分04秒 | ||
単行本 | 表紙カラー/本文白黒、B6、22ページ | 300dpi自動、向き補正なし、傾き補正あり、OCRなし | 0分23秒 | 0分25秒 |
300dpi自動、向き補正なし、傾き補正あり、OCRなし、モアレ除去あり | - | 2分16秒 | ||
さきの速度比較と同じパラメータで比較した限りでは、文字原稿における輪郭はScanSnapのほうがシャープで、本製品で読み取った文字の輪郭は若干ぼけて見える。相対的にそう見えるだけで実用上の問題があるわけではないのだが(むしろScanSnapはシャープネスがかかりすぎている感がある)、本製品の詳細設定ダイアログボックスで「エッジ強調」を最大限シャープにしても、まだScanSnapよりは多少ぼけた感があるので、シャープな輪郭を好む人は気になるかもしれない。
いっぽうで写真などカラー原稿の発色については、黒がきちんと引き締まった黒として出力する一方で、中間の階調がやや暗く、細部のディティールがつぶれがちだ。後述する「明るさ」や「コントラスト」で補正をかけようとしたのだが、こんどは彩度が下がってしまい、ScanSnapのように中間階調が明るい出力は得られなかった。なんらかのコツがあるのかもしれないが、いずれにせよデフォルトの値はかなり暗く感じる。
原稿読み取り時のカラーモードをフルカラー/グレー/白黒などから自動判定する「カラーモード自動検知」については、ScanSnapが「グレーと白黒で判断がつかなければ白黒」であるのに対し、本製品は「判断がつかなければグレー」というチューニングを施しているようで、白黒原稿はほぼグレーに統一している。ファイルサイズ的には大きくなるが、微妙な違いで白黒になったりグレーになったりというバラつきがないので、見栄えの点からはこちらのほうがよいだろう。
前述のパラメータにおける実験結果は以下の通り。これを見る限り、ScanSnapに比べてOCRの精度は高いようだ。縦書きの中に混じっている横組みの数字、いわゆる縦中横については認識率が低下するようだが、そもそも縦書きに対応しているか怪しいScanSnapに比べると雲泥の差だ。
仕様上は本製品が30枚、ScanSnap S1500が50枚と差があるが、本製品で規定を超える50枚をセットしても特に問題は発生しなかった。もちろん紙そのものの厚みの問題はあるだろうが、原稿をUターンさせる排紙トレイの構造上、控えめな値にしているだけではないか、というのが率直な印象だ。
重送検知機能としてはScanSnapと同様、長さ検知、超音波検知の2種類を搭載している。重送が発生しているにもかかわらず検出できずにスルーする事故は、試用期間内には発生しなかったことからも、実際に使ってみても重送の検出精度はScanSnapとほぼ同等であるように感じられる。原稿を破棄してから重送によるページの抜けに気づくという事故は、少なくともScanSnapと同じレベルで起こりにくいとみてよさそうだ。
ところで重送検知に関連してごく一部の自炊ユーザーが驚喜するかもしれないのが、文藝春秋社の「Number」など、薄い紙を使ったカラーグラビアに強いことだ。こうした紙は静電気を帯びやすいこともあり、ScanSnapでは1枚ずつ手差しで読み取ったほうが速いのではないかというくらい重送が頻発する。自炊ユーザーにとっては「天敵」とも言える存在だ。
本製品ではこうした原稿についても、かなり実用的なレベルでスキャンが行える。重送がまったくないわけではないが、10枚、20枚程度ならおおむね問題なく読み取りが行える。紙が薄いが故にUターン排紙させた際に排紙トレイ上で原稿がそろいにくいという別の問題はあるが、ほんの数枚読み取るだけで重送エラーが発生するScanSnapとは雲泥の差で、これだけのために本製品をチョイスする価値があると言っても過言ではない。
ただ、冒頭に述べたように写真の鮮やかさはむしろScanSnapのほうが上なので、完成したデータだけを比較するのであれば、ScanSnapのほうが誌面の再現度は高いと感じられる。「設定値をいじればなんとかなるのかもしれない」という点は留保しつつも、このあたりは実に悩ましい問題ではある。
重なった用紙をそのまま読み取ることができる非分離給紙は、複写伝票などはもちろんのこと、帯を重ねてテープで貼りつけた状態の本のカバー、さらに厚みがなければCDのブックレットなどもそのまま読み取ることができる。調子にのって中綴じのステープラーをそのままスキャンし、センサ部に傷をつけてしまわないよう注意したい。
ちなみに非分離給紙でスキャンをする場合は本体右側面のレバーを切り替えるだけでなく、ユーティリティの側で重送検知をオフにしないとエラーが出る。さらに非分離の原稿の多くは厚みがあるため、排紙方向もUターンからストレートに切り替える必要がある。つまり非分離給紙でスキャンを行う際は物理的なレバー2つとユーティリティ、計3個所を切り替えなくてはならない。これはやや手間だ。ScanSnapのようにキャリアシートが必要ない点はメリットだが、切り替えの手間を考えると一長一短だ。将来的な改善を期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.