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» 2013年05月28日 14時34分 UPDATE

今後は文具の総合企業に:なぜ「NOLTY」なのか――手帳の王者が「能率手帳」の名を捨てたわけ

「能率手帳」は日本の手帳の代名詞ともいえる歴史あるブランド。この手帳を手がけるJMAMが由緒あるブランドを捨て、新ブランドの「NOLTY」を立ち上げたのはなぜか。その理由を探った。

[舘神龍彦,Business Media 誠]
Photo 予定欄に初めて時間軸を入れた手帳として知られる能率手帳

 「能率手帳」から「NOLTY」に――。老舗手帳がブランドを刷新するというニュースは、手帳ファンをはじめとする多くの人を驚かせた。能率手帳の開発・販売元である日本能率協会マネジメントセンター(以下JMAM)は、なぜ、世間に広く認知されているブランドを捨て、新ブランドを打ち出したのか。JMAMが開催した説明会で、その一端が明かされた。

日本でもっとも歴史のある手帳ブランド

Photo NOLTYブランドの手帳を持つJMAM 代表取締役社長の長谷川隆氏。ブランド名はNew Style、Original、Life Time、Your willという思いが込められている

 1949年に誕生した能率手帳は、日本の手帳の代名詞ともいえる歴史あるブランド。日本で初めて予定記入欄に時間軸を設けて大きな注目を集めた。当初はJMAMが展開する人材育成事業の会員企業に無償で配布していたが、1951年から法人向けの販売を開始。1958年からは文具店での販売も開始した。

 この能率手帳が2014年版から、新たな「NOLTY」ブランドの手帳として生まれ変わる。ブランド変更にあたっては、すべての商品について244もの観点から品質や機能を見直し、133アイテムを改良。これまで手帳の生産を担当してきた新寿堂を完全子会社化し、試作品などの開発もスピーディに行えるよう体制を強化する。

 ブランド刷新の大きな狙いは若年層の取り込みだ。能率手帳は40代以上の手帳ユーザーにはなじみのあるブランドだが、もう1つのボリュームゾーンである若年層の認知度はやや低く、JMAMの中でも「『能率手帳は年配の人の使うもの』という思い込みから、敬遠されているのではないか」と仮説を立てていたという。

 JMAMはブランド名を能率手帳からNOLTYに変更することで、若年層を中心とした幅広い層に受け入れられる手帳作りを目指す考えだ。同社はまた2013年を第二創業期と位置付けており、手帳ブランドの刷新を通じてそれを内外にアピールする狙いもあるという。

 なお、新ブランドの手帳には、従来からの顧客や販売店が迷わないよう、数年間は旧来の「能率手帳」というネーミングが併記される。

sa_nt02.jpgPhoto 説明会では、時代ごとの能率手帳の広告が披露された。これは'70年代のもの(画面=左)。能率手帳ユーザーの経営者は、ほぼ例外なく過去の手帳を保管しているという(画面=右)

市場やユーザーの変化に合わせた“王者の挑戦”

Photo JMAMの掲げるミッション

 ブランド刷新の背景にあるのは、手帳市場の変化だ。手帳ブームはここ10年ほど続いており、雑貨メーカーや出版社がテイストも狙いも異なる商品を投入してきた。その結果、手帳のユーザー層が学生や主婦にも広がったことから市場が拡大。ニーズが多様化し、メーカー間の競争も激化している。

 また、手帳の使いこなしに関する新たな提案やアイデア、GTD(Getting Things Done:ワークフロー管理の手法)やライフログといった新しい考え方が次々と出てきており、こうした用途への対応も急ぐ必要がある。

 さらにJMAMがこの市場で勝ち残っていくためには、「夢手帳☆クマガイ式」(GMOインターネットCEOの熊谷正寿氏がプロデュースした手帳。発売当初はJMAMが製造販売を担当していた)のような個性的なビジネス手帳の開発や、新たなユーザー層のニーズに合った手帳の開発も不可欠だ。今回のブランド刷新は、JMAMが自らのミッションを「成長したいと願うすべての人を支援し続ける」と定義し、手帳市場とニーズの変化に前向きに取り組んでいくことの意思表示ともいえそうだ。

文具の総合ブランドへ

 同社はまた、手帳の枠にとどまらず文房具全般を開発していく意向であることも明らかにした。文具の開発は、同社の「書くことを追求する」というミッションに伴うもので、スマートフォンと連動する文具を開発する可能性もあるという。今後は文房具をNOLTYブランドで開発し、かつての能率手帳と同様に小売店で販売していこうというシナリオを想定しているのかもしれない。

 手帳そのものを刷新するとともに、新ジャンルの商品を開発する――。ブランド刷新の真の狙いは、そこにありそうだ。今後、NOLTYブランドのどんな手帳と文具が登場するのか今から楽しみだ。

著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

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 手帳評論家・デジアナリスト。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売


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