改善点についても同じだ。
「こことここを直したほうがいいよ」と一方的に指摘するのも簡単だが、本人がどう感じているかをまずは聴いてみる。「どこか難しかったところは?」「困っているところは?」「特にアドバイスをしてほしい部分はある? それはどこ?」などと水を向ける。
「実は、この数字の加工の仕方がこれでいいのかな、と自分でも自信なくて。整理する際、月単位でまとめていいのかなと思ってます」「最後のブロックでの文章が“何を言っているのか分からない”ものになっているような気がして、不安です」などと、部下・後輩自身が語った部分についてまずは詳細にフィードバックやアドバイスをしてみる。
その上で、部下後輩が気づいていない箇所について言及するとよいだろう。
相手(当人)の言い分を聴く。「結果」だけではなく、「どうやって取り組んだか」といったプロセスも含めて言うように促すのが、うまいやりかただ。
「こういうアウトプットを作成しました。ポイントは、○○と××を盛り込んだ点です。なお、これをするのに、隣のチームの□□さんに相談に乗ってもらい、顧客視点でのヒントを頂きました。そのヒントを生かしたのが、××のグラフです」などと述べ、「なるほど、そういう点に着目してみればいいのだな」と上司は理解する。
「では、まず、盛り込んだというポイントの○○と××について言うね。確かに……」
「□□さんにもアイディアを出してもらったんだね。複数の考えを入れるのはいいね。××のグラフも確かに、顧客視点に加工されていると思う」
などと、本人が述べたポイントを中心に、まずはフィードバックする。
そして、「さっき自分で言っていたこと以外で、私が気づいたことを言うね」と前置きし、「△△とこの図表についてなんだけど、これは、流れが理解しづらい気もするので、順番を入れ替えたらどうかな。なぜかというと、今回、お客様は、この技術にして詳しくはない方ばかりなので、理解しやすい順番というのも考慮したほうがいいと思うんだ」――と、こんな風に上司や先輩ならではのコメントもする。
本人の気づき以外に、異なる視点からのフィードバックも与えられるため、部下や後輩の成長をより支援することができる。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
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