女性社員へのその配慮、実は“余計なお世話”です上司はツラいよ(1/2 ページ)

「女性に夜勤させていいのか」「女性にどこまでやらせていいのか」――。言った本人にしてみれば“善意の発言”なのだろうが、実はこれは“間違った”配慮。女性部下の成長の芽を摘むことになりかねないのだ。

» 2014年10月16日 07時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]

 研修をしていると、管理職やOJTトレーナーの方からこんな相談を受けることがある。

「新入社員が配属されたんですが、うちの部署では初めての女性で、どう扱ったらいいか分からなくて。あまり無理させちゃいけないと思うし」

「女性に夜勤させるのって、どうなのかと考えちゃう。男なら無理させても大体の加減が分かるけれど、女性にどこまでやらせていいのか」

「男が相手なら、平気で“バカヤロー”とか言えるけど、女性だとそうもいかないし」

 こういう話を聞いたら、皆さんはどう思うだろう。もちろん賛否両論あると思うが、ここで挙げた管理職の方々のように悩んでしまう人も多いのではないだろうか。

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 かれこれ15年以上前のことになるが、こうしたジェンダーの問題を強く意識するきっかけとなった出来事がある。プレゼンテーション研修の講師をしていた時のことだ。

 一人の日本人男性が、自社製品についてプレゼンした際、「このデバイスはとても軽くて、女性でも持ちやすい設計になっています」と話した。プレゼンが終わり、参加者や私からフィードバックをしていたとき、米国人男性がこうコメントした。「先ほど“女性でも持ちやすい”という言い方をしたけれど、あれはわざわざ“女性でも”という必要はなくて、例えば“どなたでも”といった表現のほうがよいと思う」。

 これを聞いた私を含めて、研修に参加していた日本人全員が「おお、そうか。こういうのがジェンダーの問題になるんだな」と学んだ。差別しているつもりはないのに、無自覚に“差別的”な表現を使ってしまっている――これがジェンダー差別における問題なのだ。

女性を“特別扱い”する必要はない

 「女性には配慮したほうがいいのか」という質問をするのは、ほぼ男性だ。そういうときは、私はすかさず問い返すことにしているが、このような会話になることが多い。

田中: その女性は男性と同じ職種で、同じ待遇、同じ賃金なのですか? 雇用条件に何か違いがあるんでしょうか?

管理職A氏: いえ、ありません。

田中: だったら、男性女性を問わず、同じ扱いでいいですよ。

管理職A氏: いやあ、理想としてはそうでしょうけど。でもやっぱり、男と女は違うでしょう? 体力とか、ほら……。

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 しかし「無理をさせてはいけない」のは男性だって同じだろう。「男ならバカヤローと言って、身体で覚えさせられる」というが、男性だってそれは嫌なはずだ。こういう人は、無意識のうちに「(普通の)男性は体力があり、ストレスにも強い」と、男性にも“あるべき姿”を押しつけてしまっている。これもれっきとしたジェンダー差別だ。

 しかし、「仕事における男女平等」という言葉が叫ばれて久しい今の時代、仕事の場で“男性性”“女性性”を無意味に強調するのは、やはりよろしくない。マネジメントにおいても、「男性」「女性」を意識しないのが“お作法”だろう。

 だが、悪気なく、善意に基づいているのだが、結果的に「差別」につながる対応をしてしまうケースが多いのではないかと思う。

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