「指示したことは四の五の言わずにやってほしい」と思う中高年上司と、「仕事は目的を理解してから手掛けたい」と考える若手社員。両者のすれ違いはどうして起こるのか。そしてその解決法は?
「『目的は何ですか?』『何のためにこれをするんでしょうか?』って聞いてくるんだけど、いちいちメンドクサイんだよなぁ」
と、研修でため息交じりに話す50代後半のマネージャがいた。「イマドキの若手は細かく説明しないと納得しないし、納得しなければ動かないし。オレたちの若いころは、目的だのゴールだの考えず、上司に言われたら、仕事を与えられてありがたいと思って取り組んだもんだよ」などと力なく言う。
同じ50代ということもあって、私もなんとなく気持ちが分かる。確かにあのころは、目的を毎度確認するなんてことはせず、素直に従っていた気がする。だから、いざ自分が上司という立場になったとき、部下が目的や理由を真顔で問うことに驚いてしまうのだろう。
若手や中堅社員向けの研修で「どんなときにやる気が出なくなるか」を挙げてもらうと、必ず「目的を知らされない」「何のためになるかわからない作業をさせられる」「いいからやれと言われる」といった意見が入ってくる。その内容をマネージャー向けの研修で紹介すると、彼らの反応は次のような2通りに分かれるのだ。
田中: 部下に気持ちよく仕事をしてもらうためには、目的や意図を伝えることが重要なんですよね。
マネージャーA: うん、そうだよねぇ。確かにオレだって目的を聞かされないとやる気でないよなあ。つい言い忘れるけど、大事だよね。
マネージャーB: え? いちいち説明しないといけないの? 俺たちが若いころは、目的なんかいちいち説明してもらえなかったのに。
Aさんのような反応をするのは、どちらかというと若い世代のマネージャが多い。一方、Bさんのように、にわかには受け入れがたいという反応を示したりするのは、冒頭の例のように40〜50代の上司に多いイメージだ。
もちろん、質問する部下は「やりたくない」とか「反抗している」から目的を聞いているわけではない。純粋に「目的を理解してから始めたい」と考えているだけなのだが、上司に素直に従ってきた経験を持つ中高年上司には、信じがたい質問に映るらしい。
しかし考えてみれば、彼らだって若いころ「何のためにこの業務をする」ときちんと説明を受けたほうがよりやりがいを感じられたのではないか。自分も理由や目的を聞いたら、もっと質のよい成果を出せたり、自分の実になる何かをより多く得られたりしたのではないかと思わなくもない。
“目的”を把握してから取り組む――今、考えてみると、これは当然のことだ。「言われたままやっていてよかった」というほうが不健全だし、思考停止と言えなくもない。言われたことに疑問を持たず、何でも取り組んでいたのはなぜなのだろうか。
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