女性社員へのその配慮、実は“余計なお世話”です上司はツラいよ(2/2 ページ)

» 2014年10月16日 07時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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能力を伸ばす機会を、無意識のうちに奪っている

 以前、大企業で役員を務める男性にこう教えられたことがある。

 「『女性は早く帰っていいよ』『女性は宿直しなくていいよ』などと“女性であること”を理由に何かを『しなくていい』と“配慮”するのはよくない。なぜなら、彼女たちは、そうされることで、暗黙のうちに『私は〇〇をしなくていいと思われているのだ』『〇〇をするに値しないと考えられてしまうのだ』と刷り込まれ、結果として能力を伸ばすチャンスを自ら諦めたりする可能性があるからだ。『女性だから』という言い方は、結局差別になるんだよ。発言した当人は“善意に基づいている”のだろうけれど、これは間違った“配慮”だ」

 ――こう言われて、目からウロコが落ちた。「チャンスを奪う」「自分はその程度なのだと思わせてしまう」という可能性について考えたことがなかったので驚いたが、とても大切な視点だと思った。それでも何らかの配慮をする必要があると思うなら、それは、「女性」だからではなく、「働く人」として大丈夫か? という点にすべきだろう。

 元来、「会社」社会は男性を中心として発展してきた側面があるため、女性に対する配慮が生まれてしまう背景は理解できる。しかし、女性は、「男性と同等に扱ってもらいたい」と考えている(もちろん、母性保護などは別の話だ)。「女性の部下に何か気を付けることはありますか?」と聞く男性上司は、女性側の本音が分からないから不安なのではないか。

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 どうしてもひっかかるのなら、きちんと話し合えばよい。「同じ条件の採用なのだから、男性も女性も“区別”せず、同じように扱いますよ」ときちんと伝える。女性に過度の配慮をするのではなく、自分の考えを伝えることが上司のすべきことである。

 とはいえ、当世、女性に厳しく接すると「セクハラだ、パワハラだ」と言われるのではないかと心配し、“配慮”しすぎても「差別になる」と言われる。今の上司はツラい……いや、難しいバランス感覚を要求される立場なのだろう。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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