簿記の勉強はほどほどに頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた(1/2 ページ)

経理の専門知識というと「簿記」があります。経理の基本を身につけるために簿記は必要ですが、役に立たない専門知識まで勉強することはありません。

» 2015年01月22日 06時00分 公開
[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた」から一部抜粋・編集して掲載しています。


 仕事をしていると、中小企業で経理一筋ウン十年の大ベテランの人とたまにお会いすることがあります。最近の経理業務はPCを使うのでついていくのが大変だが、でき上がった試算表などの報告書はモニターでは見づらいため、紙に印刷してチェックするのがミスをなくすコツだそうです。

 そうしたベテラン経理の人にお会いしたときは、「もしいま大学生でこれから仕事を探すことになった場合にもう1度経理の仕事を選びますか?」という質問を必ずしています。私の統計では、8割ぐらいの人がまた経理職を選ぶといっています。

 みなさん経理の仕事が好きみたいです。だから経理一筋なのでしょうね。ベテランの人は簿記の資格を普通に持っています。そして、いま経理で仕事をしている人やこれから経理職を目指す人へのアドバイスを求めると、こんな答えが返ってきます。

 「経理は専門職だから、簿記の資格を取って専門知識を身につけプロになりましょう」
 「世の中の動きを知るために新聞を読みましょう」
 「最初は単調な仕事だと思うかもしれませんが、全体が見えてくると楽しくなってきます」

専門知識と実務のギャップ

 私も経理は簿記の知識を活かして仕事をする職種だと思っていますので、簿記を勉強することは大事だと思います。資格を取ることも否定はしません。

 一方でしばしば思うのは、簿記の専門知識と経理の仕事内容にギャップがあることです。せっかく専門知識を身につけても、それを実際の仕事の現場で活かせることが少ないのです。

 例えば簿記2級で勉強する範囲には、資本会計の増資をしたときや合併をしたときの仕訳の仕方などがあります。ところが、実際の中小企業の経理の現場では、増資が行われることはまれですし、合併を経験することも少ないでしょう。

 簿記の資格は、大企業の経理の方から商業高校の生徒までいろいろな人が受験する資格です。したがって、簿記の資格を取る際に学んだ知識すべてが中小企業の経理で役立つわけではないことはいたし方ないことだと思います。

 それでも専門知識を探求すればするほど、仕事内容とのギャップが生じてきます。将来、経理の現場ではなく経理を教える立場の仕事に就くとか、会計学の研究職を目指すのであれば、さらに簿記の専門知識の探求をすべきでしょう。

 でも、普通の企業経理を行っている場合には、専門知識はほどほどにとどめておくべきではないかと思います。

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