スピーチは「自己演出」――内容、表現方法をマネジメントする表現のプロが教えるスピーチの兵法(1/2 ページ)

スピーチで自分をよく見せようと飾り立ててもうまくいきません。伝えたいメッセージをより明確に伝え、余計な部分をそぎ落とす必要があります。そして、繰り返し表現することで身体に覚え込ませましょう。

» 2015年03月27日 06時00分 公開
[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「表現のプロが教えるスピーチの兵法」から一部抜粋・編集して掲載しています。


「兵法」は聞き手のために使う

 私がお伝えしたいのは、「自分の話す内容・話し方など表現すべてをマネジメントし、兵法として身につけていただきたい」ということです。

 ポイントは、伝えたいことの本質が正しく伝わるように余分な言葉を省き、誤解される話しグセをやめることです。これは「自己演出」ともいえます。

 「自己演出」と聞くと、抵抗を感じる人もいるかもしれません。先日、私のセミナーで同じような提案をしたときのことです。参加していた50代の男性経営者が「自己演出は、あざとい気がする。正直に勝負しないと相手の信頼は得られないのではないか?」と質問されました。

 自己演出は、自分をよく見せようと飾り立てる行為ではありません。「スピーチの兵法」としての自己演出は、伝えたいメッセージをより明確に伝えるためのものであり、余計な虚偽をそぎ落とす作業です。

 例えば、スピーチ内容の脚色や紋切り型の台詞、大げさなジェスチャーなどをやめて、ありのままの真実を語り、正統に演出することです。つまり、話し手である自分のためではなく、聞き手である相手のために兵法を使うのです。

 人前では飾らず、実直に、事実のみを伝えること。そのために分かりやすく演出することが、聞き手からの信頼を勝ち取る近道なのです。

「考えなくてもできる」状態を目指す

 この自己演出を続けていると、次第に自分独自のスタイルができあがってきます。ぜひ、当連載のなかで紹介したポイントをふまえ、自分の話し方の「形(かた)」をつくってください。

 故中村勘三郎さんが朝日新聞のインタビューで紹介していた、次の言葉が印象に残りました。

「形を持つ人だけが形を破れる」

 勘三郎さんによると、かつて無着成恭さんが「形を持つ人が、形を破るのが型破り。形がないのに破れば形なし」と語っていたそうです。「形」とは規範となる形式のこと。形を持つことが大事なのは、歌舞伎の世界も私たちの日常表現も同じです。

 形をつくるためには、人前で同じテーマを何度も話してみることです。ひたすら同じことを繰り返すことで、形が見えてきます。

 例えばこれが英会話の勉強やゴルフの練習だった場合、「時間がない」というのは多忙なビジネスパーソンの言い訳として許されるかもしれません。

 しかしスピーチでは、時間がないという言い訳は許されません。なぜなら、私たちは四六時中表現し続けているからです。取引先との打ち合わせも、社内の同僚との何気ない雑談も、通勤電車での立ち姿もすべてが表現なのです。

 ちょっとした意識の持ちようで表現を磨くことが可能です。要は、マネジメント感覚。意識するかしないか、です。

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