世界で最も厳しいハラル認証取得の舞台裏東南アジア発、気になるニッポン企業(3/4 ページ)

» 2015年08月06日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]

ファイル7冊分の資料を提出

「エコピカ」に与えられたJAKIMハラルの証明書

 最後に「エコピカ」を作る機械だ。RO装置を通った水は、この機械内部にあるイオン交換膜と金属を触れることで、PH値を上げ、洗浄水として使えるように変換される。製造機械自体は日本の会社が製造しているが、金属や交換膜にどんな材料を使っているかは、企業秘密だった。「『細かい情報がハラル取得には必要なのです』と時間をかけてメーカーの方に説得しました。結果、図面を書いてもらい、材料を教えてもらうことができました」

 こうして10社ほどの会社とやりとりを重ね、集まった書類は製造工程に関わるものだけで100ページを超えた。さらに労働者に関する書類、原料を本当に購入したことを証明する請求書の写し、専門の害虫駆除業者と契約していることを証明する契約書、工場のレイアウトなど、2014年5月にファイル7冊分の資料を提出した。

 その後はひたすら待ち時間だった。JAKIMに催促の電話をかけたものの、なかなかつながらない。現在ハラルはちょっとしたブームになっていて、多くの人が申請待ちをしている状況なのだ。

 申請から6カ月が過ぎたころ、突然JAKIMの認証作業を請け負っている職員がアポイントなしで工場にやって来た。メンバーは男性1人、女性2人の合計3人。彼らは原材料の請求書や雇用者リストを確認。次に工場に入って、実際の作業工程を説明するように指示し、1つ1つ丁寧に確認していった。

 約1時間半の審査を終え、審査官は3枚のレポート用紙を取り出しマレー語でいくつかのことを書いていった。「原材料はハラルのものを使っている/生産工程は全て自動化されている/ムスリムが2人生産に従事している/害虫駆除はきちんとされている/この商品はハラルの基準を満たしている」――。そして、審査官からOKが出た。

 その後、月1回のペースで評議会が開かれ、JAKIM職員、大学教授、イスラムの指導者などが集まり、このレポートをベースに、全員で1つ1つの商品を審査する。もし疑問が出てくると「保留」になって、次の議会まで延長されてしまう。

 申請準備から1年以上が経過した2014年12月、洗浄除菌水「エコピカ」は、JAKIMからのハラル認定を受けた。「周りの企業からは『早く取れたね』と驚かれました。周りを見てみると、数年経っても認証をとれなかったり、途中であきらめてしまう企業も多いですね」と冨田さんは振り返る。

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