混沌から抜け出せぬEセグメント池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2015年10月13日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 Eセグメントと言われて思い起こすクルマは多分誰でもさほど変わらない。はっきり認知されているクルマは実質的には3台しかない。ベンツのEクラス、BMWの5シリーズ、アウディのA6、以上。なぜ、Eセグメントはこんなに台数が少ないのだろうか。

アウディのA6 アウディのA6

自動車の分岐点オイルショック

 この連載では幾度となく書いてきたことだが、自動車はオイルショックを境に大きく変化した。それまでの、より速く、より快適に、より大きくという流れは1973年10月の第四次中東戦争とオイルショックを境に突如行き先を見失った。時速300km/hの世界を夢見たミッドシップのスーパーカーが登場して、ばたばたと倒れていったのもこの時期である。スーパーカーは登場した瞬間にオールドパラダイムになってしまったのだ。

 そこへ現れたのが、フォルクスワーゲンのゴルフである。ゴルフは大きく時代を変えた。開発時期から言って、オイルショックを見通していたとは考えにくいが、少なくともそのエンジニアリングを一手に引き受けたジョルジェット・ジウジアーロが、合理性デザインの時代を予見していたのは確かだ。

 こうしてCセグメントに端を発した自動車デザインの合理性改革は、すぐにBセグメントAセグメントに及び、やがてDセグメントにも波及する。当然その先にはEセグメントにも波及する見通しだった。しかし、Eセグメントに到達する前に、この新しいデザイントレンドは足踏み状態に入ったのだ。

 横置きFFレイアウトとは、メカニズムをコンパクトにまとめて、その分、室内空間を確保する合理的かつ理知的な設計である。小さなエンジンを使ってノーズを短くしない限り成立しない。

 Cセグメントのデザインを全てゴルフ流に塗り替えつつも、このレイアウトのDセグメントへの波及は一筋縄ではいかなかった。当時のCセグメントはミニマムなファミリーカーであり、2ボックススタイルが一般的だった。トランクを別にするほどのスペースにゆとりがなく、室内空間は荷室と客室を兼用にしてようやく成り立っていた。Cセグメントにとって空間拡大は非常に重要な改善点であった。だから空間と引き換えに多少鼻が寸詰まりになろうと、そこに理性的ソリューションという知的な何かを感じ取って、新しいものと評価することができた。

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