カブトムシ、クワガタ、ひまわり――。表紙に昆虫や花などが掲載されている「ジャポニカ学習帳」(発売元:ショウワノート)を一度は使ったことがある人も多いはず。
今から45年前の1970年に発売され、これまでの販売数は12億冊以上。1冊の厚さは約3ミリなので、12億冊で36億ミリ(3600キロメートル)の厚さになる。北海道の宗谷岬から、沖縄県の与那国島までの直線距離が3000キロメートルほどなので、一列に並べられたジャポニカ学習帳は、日本よりも長いということになる。
この分野でジャポニカ学習帳のシェアは50%ほどと言われているが、なぜ半世紀近くも売れているのだろうか。物心がついたときにはすでに使っていたので、「発売当初から爆発的に売れていたんだろうなあ」と思われたかもしれないが、実は違う。全く売れなくて、会社が潰れそうになったそうだ。
店頭に並べてもらえないどころか、問屋にも相手にされない日々が続いた。そんな日が1年、2年……と続き、蓄えていたお金も底がつきかけた。窮地に追い込まれたショウワノートは、どうせ倒れるのなら最後に花火を打ち上げよう……といった感じで、ある作戦にでる。それが消費者にウケ、たちまち大ヒット商品の仲間入り。以降、トップブランドとして快走を続けているのである。
詳しいことは次のページを読んでいただくことして、記者はもうひとつ気になっていることがある。表紙から「昆虫」が消えたことだ。学校の先生や親などから「幼虫がグロい」とか「チョウチョの模様がキモい」とか「毒を持っていそうな虫の写真は止めてくれ」といった声があって、ショウワノートは「仕方がないので……今は花の写真にしました」といった形で報じられてきた。
しかし、本当にそうなのか。真相を確かめるべく、同社でジャポニガ学習帳を担当している小原崇さんに話を聞いてみることに。昆虫の写真を敵視するモンスタークレーマーは、本当に存在していたのか。こちらの話は後編でご紹介するとして、まずは「なぜ、ジャポニカ学習帳は長く愛され続けてきたのか?」その背景に迫ってみた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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