戦後の公立図書館の歴史は、「選書問題」の歴史でもあるからだ。有名なのは1973年、山口県立山口図書館が移転開館の際、反戦左翼的な蔵書50冊を「特定の思想にかたよった書籍は公序良俗に反し、好ましくない」と書棚から無断に抜き去ったことだろう。
1986年には富山県立図書館が、同県立近代美術館主催の展覧会の図録を寄贈された際、その図録が利用者に破り捨てられても、「修復する価値がない」と放置。昭和天皇と女性の裸体を組み合わせたコラージュ作品がおさめられていたからだ。その後も一部の公立図書館は『ちびくろサンボ』に代表されるような「差別表現ではないか」という本に関しては、自主判断で廃棄をした。90年代にも福島市立図書館が市民からの寄贈書を無断で廃棄処分にして問題になった。
いやいや、そんな問題はもはや過去の話だよと言う方もいるがそんなことはなく、2000年代に入ってからも同様の事件は続く。有名なのは、千葉県の船橋市立西図書館で、「新しい歴史教科書をつくる会」メンバーの著書を中心に107冊が廃棄された事件だ。
もともとこれらの本は住民の問い合わせに答えるために収集されたものだが、教科書の採択をめぐる議論が高まったことを受けて、「司書独自の判断」で廃棄されたのだ。また、911テロを事前に予想していたと当時話題になった米ハーバード大のサミュエル・P・ハンチントン教授の著書『文明の衝突』も貸出希望者がいたにもかかわらず、テロ発生後ほどなくしれっと廃棄されていたことも明らかになった。
図書館に関わる自治体職員や司書を批判したいわけではない。「中立公平」を念仏のように唱えているホニャララ新聞がびっくりするくらい偏った記事を書き飛ばすように、図書館も人間が運営をしている以上、このようなおかしな選書や廃棄が発生することは避けられない。つまり、「図書館のプロ」たちですら悪戦苦闘してきた歴史のある「選書」を、CCCのような「素人」がサクサク行えるわけがないのだ。
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