「仕事を失う」可能性は、人工知能の進化だけではない。日本では税金関係の代行業務は資格所持者による独占業務だが、それはあくまで国内のルール。グローバル化、IT化が進展していく中で、税金関係の代行業務を海外に外注していく流れも「十分にあり得る話」だ。
危機感を持つ杉山氏は日本国内だけでなく、海外に拠点を構えるなどして仕事の幅を広げることを視野に入れているという。例えば、マイナンバー制度は、所得をマイナンバーと紐付けられることで所得税を漏れなく徴収することを1つの目的としているが、今後は資産を守るため、海外の金融口座で管理したいと考える顧客も出てくるだろう。
「日本では、法的に不可能でも海外では通用することもある。生き残っていくためにも、世界に目を向けた多様な選択肢を顧客に提供し、幅広い需要に応えられる税理士を目指したい」(杉山氏)
ルーティンワークで回っている側面も強い税理士界全体では、杉山氏のように変化を見据えた将来に向けた対策を講じようという人はまだ少ないという。「周囲の環境の変化に合わせて仕事のスタンスを変えていかなくては、生き残ることはできない」――この危機感は税理士業界に限ったことではないはずだ。
「この先5年〜10年で変化しない業界など存在しない。だからこそ、この5年くらいの間に、10年先でも収入が入るような仕組みを考えなければならないし、私もそれを模索している」
進化するテクノロジーをどう活用し、よき“アシスタント”にしていくか。いかに視野を広げ、変化を予測し、選択肢を増やすことができるか。機械が人間の仕事を奪うより、機械を活用できる“人間”に自分の仕事を奪われてしまう未来の方が、近くにあるのかもしれない。
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