なぜ新宿駅で「迷う」のか 1日364万人をさばけるワケ水曜インタビュー劇場(迷宮公演)(1/8 ページ)

» 2016年03月23日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 新宿駅を一度でも利用したことがある人に、お聞きしたいことがある。「駅で迷ったことはありませんか?」と。

 多くの人が「迷ったことがある」と答えるはず。いま「多くの人」と書いたが、本当は「ほとんど」いや「全員」と思っている。ホームがいくつもあって、たくさん人が利用していて、迷路のようにややこしくて。そんな“迷宮”のような駅で迷わないはずがない……と思っていたら、「新宿駅で迷うことはない!」と豪語する人にお会いした。『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』という本を書かれ、昭和女子大学の環境デザイン学科で教鞭をとられている田村圭介さんである。

 「えー、本当に迷わないの?」と思ったのは、記者だけではないはず。というのも、新宿駅を利用する人は1日に約364万人もいて、その数はギネス世界記録に認定されている。364万人と聞いてもピンとこないかもしれないので、都道府県を例にすると、人口10位の静岡県(375万人)とほぼ同じ。新宿駅は大きな事故もなく、静岡県民を毎日さばいていることになるのだ。

 新宿駅を一度も利用したことがない静岡県民からは「そんなにえーかんの人が利用する駅にはいけーない」といった言葉が飛んできそうだ。翻訳すると「そんなにたくさんの人が利用する駅にはいけない」である。

 話がややそれてしまったが、それくらいたくさんの人が利用しているのである。そんな駅で迷わないはずがないと思っていたら、田村さんからこのような言葉が返ってきた。「1日に364万人もの人をさばくことができる駅……だからこそ構造はきちんとしているんですよ」と。

 考えてみれば、新宿駅の構造なんて考えたこともなかった。駅を利用するときにはスマートフォンを片手に「こっちの道かな。あっちの道かな」とつぶやきながら、目的地に向かう(注:歩きスマホではありません)。誰かと一緒のときには「お前に付いていく。任せた」と言って、何も考えずに後ろを歩く。そんな人間でも構造さえ理解すれば、もう迷うことはないのだろうか。

 田村さん……いや、田村先生、教えてください、新宿駅の構造を。生徒は、ITmedia ビジネスオンライン編集部の土肥義則。

       1|2|3|4|5|6|7|8 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.