イチローが「日本人のアイデンティティー」にこだわる理由赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2016年06月15日 11時52分 公開
[臼北信行ITmedia]

孫正義の訴えも“スルー”

 近年で言えば、福岡ソフトバンクホークスの孫正義オーナーだ。昨季日本一連覇を達成した際に当時ワールドシリーズを戦っていたカンザスシティ・ロイヤルズ(後に同シリーズを制覇し、昨年の世界一に輝く)について「もしロイヤルズが勝ったら、真のワールドシリーズをやってみたい。なぜアメリカのチャンピオンが世界のチャンピオンなのかが不思議」と語ったことがある。

 孫オーナー率いる親会社のソフトバンクがロイヤルズの本拠地・カンザス州に本社を置く携帯電話のスプリントを買収している経緯から出た発言ではあったが、結局何ら具体的な進展はなく“絵に描いたモチ”のまま終わってしまった。この発言が出る前にも孫オーナーはニューヨークのMLB本部に自ら出向いて当時のバド・セリグMLBコミッショナーに「日本と米国のチャンピオンチームが対戦し、真のワールドシリーズを行うべきだ。その興行リスクはソフトバンク側が持つので、ぜひ前向きに検討してほしい」と訴えたものの、体よく“スルー”されてしまっている。 

 やや状況説明が長くなって恐縮だが、話を「背番号51」に戻そう。こうした日本プロ野球にとって屈辱的な「負の歴史」があるからこそ、イチローは今も新たな記録を次々と塗り替えながら黙々と戦い続けているのである。イチローは自分が日本人であることに誰よりも強い誇りを抱いている。

 第1回、第2回WBCに日本代表チーム(第2回大会からチーム名は「侍ジャパン」に改称)の一員として連続出場した際にも「自分が日本人として、このチームに加わったからには日本の野球の強さを世界に見せることが責務。だからどんなことがあっても頂点を目指さなければいけないし、是が非でもそこに上り詰めなければいけない」と繰り返し、言い続けていた。

 2001年からメジャーリーグでプレーし、ここまで異国の地において数々のMLB記録を塗り替えてきたことにおいてもイチローは「日本人プレーヤーの凄さ」を植え付けようと、それをモチベーションにしてきたところがある。

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