テクノロジーが変える、クルマのカタチ 自動車業界最前線

ライドシェアは過疎地で普及させるべきだ(3/4 ページ)

» 2016年07月27日 06時00分 公開
[森口将之ITmedia]

タクシー業界は利用者目線に立っていない

 タクシー、ハイヤー、自動車教習所、観光バスの労働者組合である自交総連(全国自動車交通労働組合総連合会)のWebサイトでは、ライドシェアについて「危険な白タク」と称している。

 しかし同Webサイトに掲載されている「タクシー走行キロあたり交通事故の推移」によると、2012年の100万キロメートル走行あたりの事故件数は全自動車が0.9なのに対し、タクシーは1.6に跳ね上がる。実際にはタクシーの方が事故に逢う確率は高いのである。

 また、Uberが走っている京丹後市は過疎地であり、鉄道やバスの便が悪い。自動車を所有していない、あるいは運転ができない人は、相応の距離の移動はタクシーに頼るしかない。しかしタクシーは運賃が高いから、移動を我慢することになる。

 ライドシェアなら、京丹後市の例で分かるように、タクシーより安く移動できる。ところがタクシー業界は「安全性」を盾に、導入に反発している。移動の自由を制限していることになるわけで、利用者目線とはとても言えない。タクシーを含めたモビリティサービスは、何よりも利用者の立場で考えるべきだ。

 しかし、最近になって改善策が出始めた。タクシー業界内から、東京23区および武蔵野・三鷹市での初乗り運賃が現行の2キロメートル730円から1キロメートル410円程度に引き下げるという案が出てきたのだ。高齢者の中には200〜300メートルの距離でも歩くのが辛いという人も多い。だからこの変更は歓迎できる。

 一方、外部からはNTTドコモが配車システムに参入するというニュースがある。同社はこれまでも、自転車シェアリングサービスを東京、仙台、神戸など11地域で運営しており、モビリティに対する関心は高い。自転車シェアで活用している情報通信技術をタクシーにも展開しようと考えたようで、12月をめどに実証実験を始める見通しだ。

 しかし、問題はどちらも東京での実施である点だ。後者は現時点では場所は明示していないが、技術開発のパートナーとして富士通とともにタクシー事業者の東京無線協同組合が名を連ねているところを見ると、東京である可能性が高い。

 こうした取り組みは、公共交通が十分に発達した大都市東京より、交通が貧弱な地方の過疎地でまず導入すべきだろう。その方が社会貢献になるからだ。ただし現状の考え方では、地方の交通は限界にきていることもたしかである。タクシー、そしてバスもだ。

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