伊藤園や中古車販売のIDOMが総力戦で挑む変革とは?(2/2 ページ)

» 2016年09月16日 05時30分 公開
[ITmedia]
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部門を超えて連携する伊藤園

 「CSR(企業の社会的責任)の意味合いが大きく変わりつつある」――こう語るのは、セミナーの特別講演に登壇した伊藤園 常務執行役員 CSR推進部長の笹谷秀光氏だ。

 これまでCSRと言うと、慈善活動や寄付活動などが一般的だったが、こうした取り組みは企業の業績に大きく左右されてしまい、例えば、ひとたび収益が赤字に転落すれば持続するのは困難だ。そこで現在、企業はビジネスの本業を通じてCSRを推進するべきだというのが国際的な考え方になっている。実際、ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授は社会的価値と経済的価値を同時実現する新たな経営戦略としてCSV(共有価値の創造)を打ち出している。

伊藤園 常務執行役員 CSR推進部長の笹谷秀光氏 伊藤園 常務執行役員 CSR推進部長の笹谷秀光氏

 では、企業はCSVをどのように進めればいいのだろうか。笹谷氏によると、価値創造のストーリーづくり、効果的・戦略的な発信、トップコミットメントと社内浸透といったポイントを抑えることが肝要だという。

 そうした中、伊藤園では「お客様第一主義」を経営理念に掲げ、全社員がこれを共有価値として持つように浸透させている。その上で取り組む事業の1つが茶産地育成である。

 現在、日本では農家の後継者不足や自給率低下などの問題によって茶園面積が減少している。これは伊藤園にとっても原料の調達面で課題であり、茶産地の支援が不可欠だった。そこで伊藤園では、農家に対して茶葉の全量買い上げ契約を結ぶことを決めた。さらには、荒廃農地も茶園として活用できるよう、そうした地域の育成にも取り組んでいる。このような伊藤園の茶産地育成事業は、同社にとって原料を安定調達できるだけでなく、農家の経営力強化、地域の耕作放棄地の削減にもつながっているという。また、茶殻の有効活用の一環として茶殻リサイクルシステムも実施している。こうした取り組みは世界的にも評価され、経済誌『フォーチュン』の「世界を変える企業50選」という特集で18位にランクされたという。

 伊藤園の強みは、CSV活動をあらゆる部門で推進している点である。上記に加え、例えば、製造・流通部門では環境配慮に向けたペットボトルの軽量化、マーケティング部門では、日本の伝統やお茶文化を普及するためのティーテイスター制度の導入と、自社だけのメリットにとらわれない取り組みを行っている。

 そしてまた、このような各部門での取り組みが他部門にも好影響を与えている。「茶畑から茶殻までと、バリューチェーン全体で物事を考えるようになった」と笹谷氏は話す。その結果、部門を超えた連携が広がり、新たなビジネスチャンスやイノベーションが生まれるようになったという。

 ジグゾーパズルのピースを繋げていくように、今では連携は社内から社外へとどんどん広がっていると笹谷氏。今後ますます「チーム伊藤園」の活躍が日本企業のCSVにも大きな価値をもたらしていくはずだろう。

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