連載
» 2016年10月11日 06時30分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:ヘッドランプの進化とLEDが画期的な理由 (1/4)

国土交通省は2020年4月以降に販売される新車から「オートライトシステム」の装備を義務付ける方針だ。そこで今回は、安全性を高めるためにクルマのヘッドランプがどのようなトレンドで変化してきたのかについて紹介したい。

[池田直渡,ITmedia]

 先週半ばの各社報道によれば、国土交通省は2020年4月以降に販売される新車から、ヘッドランプを自動点灯する「オートライトシステム」の装備を義務付ける方針だという(関連記事)

 問題となっているのは薄暮時の事故だ。ヒトの視覚システムには2系統のセンサーがある。網膜が光を受けたとき、明るい環境では色を見分ける錐体(すいたい)細胞が中心となって働き、暗い環境では物の形を見分ける桿体(かんたい)細胞がメインになる。錐体細胞は鈍感で、暗い場所では機能できないためだ。桿体細胞は色を判別できないので暗い場所では色が分かりにくくなる。

 では、この暗い場所のスペシャリストである桿体細胞が光に当たるとどうやって信号を出すかと言えば、タンパク質とビタミンの分離によって視神経に信号を送る仕組みなのだ。タンパク質とビタミンが結合した状態に光が当たると分子の形が変わって分離する。これがセンサーの仕組みである。逆に言えば、タンパク質とビタミンが結合した状態でいてくれないとセンサーが機能しない。ところが、明るい場所で大量の光が網膜に当たっていると、この結合が切れてしまい。急に暗くなっても「結合状態」の在庫がない。しかも悪いことに結合には30分程度の時間が必要だ。

 暗い場所から明るい場所に出たとき、まぶしさを感じて視力が低下する明順応は1分程度で回復するが、明るい場所から暗い場所に入ったときに視力が低下する暗順応には30分を要するのはこの結合状態を作るのに時間がかかるためだ。

 薄暮時の事故が多いのはこうした人体の特性によるものだと言える。今回のオートライト採用は、暗順応への対処である。

ハロゲンとHIDの時代

 ヘッドランプと安全性に関しては、暗順応だけではなく、さまざまなポイントがある。代表的なものでは絶対的な光量の問題や配光の問題が重要だ。そうした性能を向上させて、安全を実現するために、実際のクルマのヘッドランプのメカニズムはどのようなトレンドで変化してきたのだろうか?

HIDバルブ(出典:ボッシュ製品ページ) HIDバルブ(出典:ボッシュ製品ページ)
ハロゲンバルブ(出典:ボッシュ製品ページ) ハロゲンバルブ(出典:ボッシュ製品ページ)
通常の電球(出典:ボッシュ製品ページ) 通常の電球(出典:ボッシュ製品ページ)

 1970年代までの主流はいわゆる白熱電球だった。タングステン製のフィラメントに電流を流して発光させる。問題はこのフィラメントの構造だ。フィラメントは意図的に細い線材を用いて電気抵抗を高めている。電気抵抗が高いからこそ発熱発光するのだ。ところが、この熱によってフィラメントのタングステンが徐々に蒸発し、やがて断線してしまう。電球の球切れはこうして起きていた。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

ITmedia 総力特集