このビジネスモデルが崩壊してきているというわけだ。では、その理由はなぜか。
報道によれば、大手メーカーでは実現できないような低価格のかつらを提供する新興勢力が増えてきているからだという。確かに、2000年に創業したかつらメーカーのWith(ウィズ)のWebサイトをのぞくと、オーダーメイドの全頭かつらは16万8000円、部分かつらは14万8000円。修理・補修費用も2万5000円〜5万円と料金表を公表している。
「かつらのために働いているみたい」「頭に高級車をのっけて生きている」という嘆きも漏れ伝わるカツラーが、アデランスからこのような新興勢力に乗り換えてしまうのもしょうがないのかもしれない。
ただ、アデランスの「高いかつらを売るビジネス」が崩れ始めた理由はこれだけではなく、日本人の「かつら」に対する認識が変わってきていることも大きい。
よく言われることだが、日本ほど「ハゲ」に対して不寛容な社会はない。それを象徴するのが、1984年に日本進出を果たした大手かつらメーカー、スヴェンソンのローランド・メリンガー社長(当時)の言葉だ。
「日本に来て初めてわかったが、日本人は髪が薄くなると真剣に悩む。ヨーロッパなら全く髪がない人でも街中をかっ歩している。一方、日本人は抜け始めの時点で考え込み、品質のよいかつらを探し歩く」(日経産業新聞 1986年4月15日)
松木安太郎さんや漫画家のやくみつるさんも愛用を公言する「編み込み式増毛法」を開発した世界的なかつらメーカーでさえ驚くほど「薄毛」を忌み嫌う文化が日本には定着していたのだ。
これには、日本人の髪が濃い黒であるため、欧米人よりも薄毛になると惨めな感じになってしまうからだとか、「恥の文化」という日本の精神性が関係しているとか諸説あるが、決定的な原因は分かっていない。ただ、この「ハゲ=恥」という文化を世に広めた「功労者」が誰なのかだけははっきりしている。
お分かりだろう、アデランスだ。
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