こうした集団の動きを分析する技術は「防犯」という視点でも生かすことができる。その研究を行っているのが日本電気(NEC)だ。
同社では、集団の動きから異常を検知する「群衆行動解析」と呼ばれる技術を活用。防犯カメラに画像認識技術を搭載することによって、混雑状況の見える化するたけでなく、群衆の“動き”から有事を判断するという。
例えば、密集している集団が一斉に散らばったときは「そこに危険物や危険人物が出現した」と判断、逆に集団が1カ所を取り囲み、立ち止まっている場合は「そこで誰かが倒れた」「ケンカが起きている」――などと判断。通信している監視モニター室にアラートを出すことで、警備員に異常事態を教えてくれる。
東京都・豊島区は昨年、この技術を池袋駅周辺の防犯カメラに導入。東日本大震災の経験を踏まえ、有事の際、パニック状態で駅に詰め寄せる人たちの動きを分析することで、迅速な状況把握と、初動対応の効果に期待しているという。
「東日本大震災のとき、帰宅困難者が池袋周辺に溢れていた。そのとき、一番欲しかったのは情報だった。いま、どんな問題が起こっているのか、状況を把握しないと動けない。『群衆行動解析』によって異常を見逃すことなく、初動対応にあたることができる」(豊島区長、高野之夫氏)
同社のパブリックSC統括本部 新事業推進部、永野善之氏は「これまでの監視カメラは、ただ映像を映しているだけに過ぎなかった。ここにテクノロジーを入れることで、カメラが異常に気付くことができ、より迅速な初動対応を可能にする」と説明する。
「警備員が常に肉眼でチェックする必要がなくなるので、トラブルを見逃さないことが可能になる。2020年、警備員は圧倒的に不足するが、限られた人的リソースの中でいかに街の安全を守るかが問われている」(永野善之氏)
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