記録的な炎上の年――2016年の謝罪成功者は?(3/3 ページ)

» 2016年11月02日 07時14分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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 スキャンダルは刑法犯罪ではありませんので、不倫などがあっても被害者は配偶者や家族など限られた近親者にすぎません。それゆえ観客の腹落ちする対応を謝罪で実現できれば再び活動は可能になります。

 その腹落ちが「禊」(みそぎ)です。謝罪に失敗した人はことごとく禊から逃れようとしました。神様にお祈りして願いをかなえるときに滝に打たれたり、夜明け前に水をかぶったりしてつらい思いをする修行も禊の1つですが、このつらさに耐えるという行為があるからこそ禊として成立するのです。

 自らの反省を美しい言葉で語るのではなく、ぶざまさやみっともなさ、愚かさとして恥ずかしい姿をさらした人は、冷たい滝に打たれるのと同じく、禊を受けたと認められやすくなります。しかしそうしたつらい場面から逃れようとした人はことごとく炎上していきました。

 会見での自己正当化の言い訳はその最たる例ですが、そんなことはやっていないとか誤解だと抗弁したり、そもそもきちんとした説明もしていない、厳しい報道陣のツッコミも受けずにやり過ごそうとした人はのきなみ失敗しました。報道陣の厳しいツッコミを受けることこそが事態を好転させるチャンスだったのです。

 謝罪では怒られることが必要だと、私は訴え続けています。それは報道陣と観客の怒りを浴びることなしには次のステップがないからです。怒りや批判を避けようとすれば、禊はいつまでたっても終わらず、鎮静化は遠のきます。

「逃げ切り」は成功か?

 真の謝罪の成功は明確に定義できます。スキャンダルで謝罪会見など開いたものの、今現在も仕事を継続できていることが成功で、今仕事を継続している人が謝罪成功者です。何をしたかの罪の重さでは、全員刑法犯ではありませんので五十歩百歩に過ぎません。しかし結局トラブルがあっても、今現在、それ以前と変わらぬペースで仕事ができているのであれば、その謝罪は成功です。

 一方、スキャンダルを起こしても会見しなかったり、逃げ通した人もいます。流れの速い現在の情報環境では、年初からのスキャンダルでも記憶が薄れている人は多数いるでしょう。しかし、そうした人たちで元の仕事に戻れなかったり、逃げ切りというかそのまま表舞台から姿を消してしまった人もいます。

 それ以上みっともない姿をさらさずに済んだとはいえますが、それは成功ではありません。記憶が薄れるスピードの速い現在、いったんは逃げられたとしても、今度は元の栄光には戻れないからです。そもそもスキャンダルで批判を受ける人はスターや著名な地位など、恵まれた環境にいた人です。しかしその地位を追われて逃げた以上、元の場所に戻ることは限りなく難しいのです。

 事件が起きた時に適正な対処をして、禊を経ること以外、謝罪を成功させたとはいえません。謝罪の成功者とは、人々の記憶からそのスキャンダルを消すことに成功した人なのです。(増沢隆太)

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