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» 2016年12月02日 06時30分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:なぜ鉄道で「不公平政策」が続いたのか? (1/5)

赤字の鉄道路線の存続問題を議論するとき「鉄道は他の交通モードに対して不公平な立場にある」という意見がしばしば見受けられる。JR北海道問題もそうだし、かつて国鉄の赤字が問題になったときも「鉄道の不公平」が取りざたされた。なぜ鉄道は不公平か。どうしてそうなったか。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 鉄道の線路を所有する会社と、その線路の上を走る列車の所属会社が違う。この形態には3つのパターンがある。「直通運転」「上下分離」「オープンアクセス」だ。このうち、上下分離とオープンアクセスは似たような考え方である。しかし、目的と運用が大きく異なる。そもそも日本にはオープンアクセスの事例はない。

 オープンアクセスについて、日本の鉄道の実情に合っているか、採用の可能性はあるか。それも今後議論されるべきだ。しかし、その前に相互直通運転と上下分離の違い、上下分離が始まった背景を知っておきたい。

伊豆箱根鉄道の修善寺駅に到着したJR東日本の特急「踊り子号」。東京から熱海までJR東日本、熱海から三島までJR東海、三島から修善寺駅まで伊豆箱根鉄道の線路を走る 伊豆箱根鉄道の修善寺駅に到着したJR東日本の特急「踊り子号」。東京から熱海までJR東日本、熱海から三島までJR東海、三島から修善寺駅まで伊豆箱根鉄道の線路を走る

営業の主体は変わらない「直通運転」

 ある鉄道会社の車両が、他の鉄道会社の線路に乗り入れる。これが直通運転だ。例えば、小田急線の終点は小田原駅だけど、ロマンスカー「はこね号」は箱根登山鉄道に乗り入れて箱根湯本駅に着く。小田急ロマンスカーの「あさぎり号」は、JR東海の御殿場線に乗り入れる。新宿や町田などからの乗客が、乗り換えなしで箱根の入口の駅まで行ける。

 もっと身近な例を挙げれば、大都市の地下鉄と私鉄の直通運転がある。大手私鉄の沿線を地下鉄の電車が走っている。あるいは、大手私鉄の電車が地下鉄の線路を走る。地下鉄を介して、トンネルの向こう側の大手私鉄の電車がやってくる。あまりにも当たり前すぎて、利用者からは「違った色や形の電車が走っているな」という認識かもしれない。でも、よく見ると車両の所属会社の名前やロゴマークが入っている。お互いに直通運転しているから、相互直通運転と呼ばれている。

 便利で、今では当たり前のような光景だけど、特殊な運行形態だ。なぜなら、日本では長らく、鉄道会社と言えば、線路と車両の両方を保有し、列車を運行する会社とされてきたからだ。

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