フルグラやJagabeeを成長させた「現場主義」カルビーを支える女性リーダー(3/5 ページ)

» 2017年03月02日 07時25分 公開
[伏見学ITmedia]

ブランドは一人では創れない

 先を行くじゃがりことの差別化も図った。当時の社長から「じゃがりこで絶対やっていないことをやれと言われていたので、例えば、テレビCMで流れる曲を『iTunes』で販売するなど、顧客とのタッチポイントを作るための新しい取り組みをしました」と網干さんは話す。

 Jagabeeでは新たな挑戦も行っている。その1つが個包装だ。Jagabeeはカップ型と、ボックス型の2タイプを用意していて、ボックス型の中身は個包装された商品がいくつか入っている。カルビーとして新しい商品パッケージの形態だったので、網干さん自身も機械メーカーに訪れては担当者と話をして具体的なイメージなどを伝えていった。彼女の「現場主義」はこのプロジェクトでも存分に発揮されたのである。

 「ブランドは一人では創れません。プロジェクトチームだけでもできません。生産工場や営業などを巻き込み、全員で取り組むべきなのです。Jagabeeの包装製造ラインを新宇都宮工場に造ったときには、営業全員を呼んで決起集会を開くとともに、生産と営業をつなげることに尽力しました。全体の士気を高めることが重要だと感じたからです。また、現場からの意見も、先入観を持たずにどんどん参考にしました」

 とにかく現場に足を運ぶこと、そして、自分でやってみること、これが網干さんの信条だ。

 「元々、営業経験がないので、現場に入り込んで、彼らがどういう物の見方をするのかを疑似体験することに努めました。商品デザインについてアイデアを出すときも、まずは自分で工作してみます。今ではデジタル化が進んでPCのモニタ画面を見ながらデザイン作業するのが当たり前ですが、あえてハサミや紙を手に取って自分で作るようにします。そうすることで見えてくることも多いのです」

 こうして誕生したJagabeeは2006年4月に発売。当初は生産量が限られていたため、地域を区切って段階的に販売していた。そこには各地の営業担当者とともにスーパーなどの店舗を回って品出しなどを行う網干さんの姿があった。

 Jagabeeは発売後もしばらくはブランドコンセプトを根付かせるために、あえて種類を増やさず「うす塩味」だけを販売し続けた。実際、次のフレーバーである「バターしょうゆ味」を発売するのは2010年のことだ。

 「ゼロのものを伸ばしていくには、何よりもまず認知してもらうことが重要です。これまで担当していた商品はある程度は認知度があったので、それを広げるのがマーケティングとしての仕事でしたが、Jagabeeは売り方や店頭作りなどまったく今までとは違うものでした」

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