日本IBMが天気予報を開始 なぜ?社内に予報施設を新設

» 2017年03月13日 16時27分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は3月13日、同社のコグニティブ・システム「Watson」を活用した気象予報サービスを始めると発表した。従来の予測技術では誤差が大きかった3〜6カ月先までの気象状況を高精度で予測するほか、天候が顧客企業のビジネスに与える影響の予測も合わせて行う。分析結果を踏まえたコンサルティングも実施する予定だ。第1弾として、航空業界、電力業界、メディア業界に特化したデータ分析と活用ソリューションをまとめた「The Weather Company データ・パッケージ」を提供開始する。

photo The Weather Company データ・パッケージの概要

 Watsonが分析するのは、米IBMが2016年1月に買収した気象企業のThe Weather Companyが保持する気象データ。米IBMが16年6月に開発した、機械学習を活用した気象予測モデル「Deep Thunder」による分析と組み合わせることで、気象がビジネスにもたらす影響を予測可能になるという。

photo Watsonの活用法と天気ビジネスの概要

 サービス開始に先立ち、日本IBMは気象庁から気象予報業務の許可を取得。本社内(東京都中央区)に気象予報施設「アジア・太平洋気象予報センター」を設置した。同センター内には気象予報士が常駐し、国内外の公的機関が発表するデータや、「アメダス」などのレーダーの実況資料を参照しながら、1時間ごとに予報データを刷新する。人工知能による分析結果を専門家の手で確認・更新することで、情報の鮮度と精度を担保する仕組みだ。

 今後はさまざまな業種・業態の企業に幅を広げつつ、個人ユーザー向けサービスも始める予定。既に天気事業を始めている海外では、再生可能エネルギーを手掛ける電力会社に対し、風力や日照時間の予報を提供するサービスなどを既に提供しているという。日本IBM ワトソン事業部の加藤陽一ビジネス推進部長は「日本では、天候の変動の影響を受けやすい小売業を対象としたサービスの開始を検討している」と話す。

photo さまざまな業種における気象データの価値

 日本IBMの吉崎敏文執行役員は、「Watsonを『天気』という大規模なビジネスの基盤に導入できたことは大きな成果。今後は医療やヘルスケア領域への導入を考えている。17年はWatsonのビジネス活用の裾野を広げる年にし、18年末には10億人のユーザーが使用するサービスへと育てたい」と今後の展望を語った。

photo Watson事業内における天気ビジネスの位置づけ

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