北陸新幹線の新大阪駅、その先をどうするか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2017年03月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 3月15日、政府与党の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームは、北陸新幹線の京都〜新大阪間のルートを決定した。北回り案と南回り案を比較検討した結果、南回り案となった。大騒動となった敦賀〜京都間に比べると順調に決まったように見える。しかし、この案に至るまでに、いくつもの案が検討されている。大きな揉めごとにならなかっただけで、複数案の議論があった。

北陸新幹線京都〜新大阪間は松井山手駅付近新駅経由で決定した。南回り当初案に近い精華・西木津地区経由は奈良県を経由するため難しいだろう(出典:国土交通省発表資料) 北陸新幹線京都〜新大阪間は松井山手駅付近新駅経由で決定した。南回り当初案に近い精華・西木津地区経由は奈良県を経由するため難しいだろう(出典:国土交通省発表資料

 少なくとも2015年11月まで、京都〜新大阪間は「東海道新幹線に並行する形で直行するもの」という見方が大勢を占めた。最大の焦点は敦賀〜京都間であって、検討するとすれば京都で東海道新幹線に乗り入れるか、独自路線を作るかであった。この中で、東海道新幹線乗り入れ案はJR東海が難色を示した。米原経由であろうと京都経由であろうと、東海道新幹線の乗り入れは困るという態度だ。

 そこで、米原経由の場合は乗り換え。京都経由の場合は乗り換え、あるいは独自路線による新大阪乗り入れの方向性となった。2015年8月にJR西日本が小浜〜京都〜新大阪ルートを示している。しかし、2015年11月に、当時の与党PT委員長から、舞鶴〜京都〜天王寺〜関空案が出された。東海道新幹線に直通しないのであれば、新大阪にこだわる必要もなかろう、というアイデアだ。今思うと噛ませ犬かもしれないが、妙案ではある。

 2016年4月11日、政府与党プロジェクトチームの検討委員会は、交通政策などに詳しい有識者2人に聞き取り調査を実施し、関西文化学術研究都市を通る新案を進言される。そこで敦賀〜新大阪間については京都で分割した。敦賀〜京都については、小浜舞鶴京都・小浜京都・米原の3ルート、京都〜大阪については、新大阪直行・天王寺直行・関西文化学術研究都市の3ルートから検討を続けた。

 JR西日本は京都〜新大阪直行案を支持した。それは九州〜山陽〜北陸〜関東という国土軸の理にもかなう。この意向を受けたか、与党PTは天王寺案を廃し、京都〜新大阪間の北回りルートと南回りルートに絞った。結果として敦賀〜京都間はJR西日本案が採用された。この時点で京都〜新大阪は北回りに確定したも同然だと思われた。しかし、南回りの案については、当初関空案を支持した与党PT委員長、京都府知事はじめ有識者から根強い支持があった。

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