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» 2017年04月20日 16時29分 UPDATE

設計図などを“立体化”:「HoloLens」導入で、建設業界はどう変わる?

日本マイクロソフトが小柳建設と協業し、「HoloLens」のビジネス活用に向けたプロジェクトを始める。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 日本マイクロソフトは4月20日、小柳建設(新潟県三条市)と協業し、MR(複合現実)に対応したヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」のビジネス活用に向けたプロジェクトを推進すると発表した。

 小柳建設は1945年創業。建設工事の請負やコンサルティングを手掛けている。同社は日本マイクロソフトからHoloLensの提供を受け、営業活動、建設工事、社内の資料管理など、多岐にわたる業務での活用を目指す。17年度中に実証実験を実施し、18年度までに実務での使用を開始する予定だ。

photo 日本マイクロソフトの平野拓也社長=左、小柳建設の小柳卓蔵社長=右

 HoloLensは、現実世界と3Dのホログラムを重ねた映像を表示できる点が特徴のデバイスで、2017年1月から法人・開発者向けに提供されている。日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「アナログの世界とデジタルの世界を組み合わせて表示するだけでなく、遠隔地と視界を共有したオンライン会議も可能なHoloLensを活用すれば、業務のデジタル変革や働き方改革が可能になる」と自信を見せる。

photo 小柳建設に導入される「HoloLens」=日本マイクロソフトの公式サイトより

 小柳建設の小柳卓蔵社長は、HoloLensのビジネス活用の目的として(1)業務の透明性向上、(2)未来のBIM・CIMデータ活用、(3)近未来コミュニケーションの実践――の3点を挙げた。

 業務の透明性向上に向けては、建物の立体的な図面を構築し、HoloLensによって閲覧可能にする技術の開発を進める。顧客への提案時、工事の施工中、工事終了後のメンテナンスなど、各段階に応じて3D図面を臨機応変に作成し、建物の完成予想図や建築状況を公開していくという。

 建設の工程表と映像を連動する技術の実用化も検討中。HoloLens上で工程表の時間軸を動かすと、建物が組み上がる様子を確認できる仕組みだ。現在は平面で表示している設計図を立体的に表示することで、顧客に分かりやすい説明を提供できるとしている。

 小柳社長は、「建設業界は、耐震偽装問題やデータの改ざん問題が起きることがあり、マイナスイメージが定着している。顧客により多くの情報を提供できるHoloLensを活用し、建設業の不透明なイメージを払しょくしたい」と話す。

photo 業務の透明性向上に向けた取り組みの例

 未来のBIM・CIMデータ活用とは、データの閲覧方法を工夫し、従業員の負担を軽減する施策を指す。実現に向けては、立体化した図面と、建設で使用するデータや文書とひも付ける技術の開発を進める。従業員はHoloLensを着用することで、図面を参照しながら関連情報を閲覧できるため、紙の資料を探す時間を削減できる。

 小柳社長は「現在、建築業は少子高齢化による後継者不足が課題となっており、若手の獲得と育成が急務となっている」と状況を説明する。「経験を積んだ作業員は、紙の図面を見ると立体的な建物の様子を頭の中にイメージできるが、新人がその域に達するには数年を要する。こうした仕事の難しさが人員の定着を妨げていたが、HoloLensを活用すれば瞬時に3D図面を確認できるため、新人は働きやすくなるだろう」と展望を話す。

photo 未来のBIM・CIMデータ活用に向けた取り組みの例

 近未来コミュニケーションの実践に向けては、遠隔地の従業員と現場の視界を共有し、リアルタイムで指示を送る技術の開発を進める。物理的に行き来が難しい場所や危険な場所もホログラムで再現できるため、画面共有によるミーティングで対応策の考案につなげられるという。建設重機や作業員の配置をシミュレーションできる機能も開発中だ。

photo 近未来コミュニケーションの実践に向けた取り組みの例

 小柳社長は「一連のデジタル技術の実用化によって、建築業界を子どもたちに憧れてもらえるような業界に変えていきたい」と話している。

 小柳建設は今後、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」やビジネスアプリケーション群「Office 365」などのツールも活用し、業務のデジタル化をさらに推進していくという。

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