曽山: こうした方が成果が出るという中竹さんの算段があったからですね。実は成果定義が明確であれば、チームの中身がどうなろうが関係なかったりします。でも、多くの人は仲が良いチーム、ノウハウを共有し合うチームなどと、成果を出すための手段を目的化してしまいます。
サイバーエージェントにも藤田(晋社長)の言葉で、「テニスサークルの部長になるな」というのがあります。これはテニスサークルが悪いのではなくて、仲良しになっていることが存在意義になっている組織を指します。こういう組織もあって構わないが、サイバーエージェントは違うからということです。結果を出し続けることが1番であり、その上でチームメンバーの仲が良ければなおいいのですが、このことをはき違えてしまうのが若手リーダーに多いです。
どういうチームを作りたいのか聞くと、仲が良いチームですとか、支え合えるチームがいいですとか言います。結果を1番に置いてないので、ぬるいチームになるのです。これはけっこう陥りがちな罠(わな)ですね。
中竹: 2年目にはそんなチームワークはうさんくさいと言い放ち、3年目で本当に仲間として勝ちたいというのが感じられたので、そうしようと決めました。
2年目は本当に圧倒して勝ったチームでした。「Penetrate」というスローガンを掲げて、最初から戦略や戦術をいっさい変えませんでした。シンプルで、やることがバレバレでも、徹底して強くなれば勝てることを目指しました。
一方で、3年目はメンツを見ても、それだけでは勝てないと思いました。ほかがやっていない新しいことにチャレンジし続けないといけないと、練習内容からすべて変えました。そこで効いてくるのがKPI(業績などの評価指標)です。試合に敗れても「この負けは、最後に優勝するための負けだから大丈夫。予想通り負けたんだから」と、選手たちに言い聞かせていました。そして最後にきちんと優勝するのです。
曽山: 今のお話を聞いていて、チームリーダーとして大事なことの1つに、戦力の見極めがあると思いました。前年に優勝したときの4年生メンバーはいないし、現有の戦力で結果を出さないといけないわけです。
中竹: 以前はこういう選手がいたよねと言っても仕方ない。ないものねだりですよね。そうした悩みは物理的に時間がとられるだけなので、選手にも考えるなと言います。
一番良くないのは、外に目を向けたり、言いわけしたりすることです。目の前に時間もあるし、人もいるのに、それを見切ってしまうことがもったいないです。
曽山: 目の前の人を身切るというのは確かにありそうですね。僕らは社内に「ありもので戦う」という言葉があるんですよ。今いる人材では結果を出せないと言うマネジャーがいたとして、「では、ほかのマネジャーに変えて結果が出たら、お前は本当に恥をかくけど、それでもいいの?」と。
もちろん、マネジャーを変えても成果が出ないことはあるだろうけど、今の戦力で戦うと決めるのはリーダーにとって退路が断てるので、この場をどうするかだけを集中して考えることができるようになるのです。それはすごく大事なことです。
中竹: それと、人は成長するのです。だから失敗から学ぼうねと言っています。
曽山: 失敗から学ぶための方法とは?
中竹: 失敗はいいよねという声掛けをさせるようにしています。「あー、その失敗いいね!」とか。
曽山: なるほど。
中竹: 仕事がうまくいって進ちょくすることも大切ですが、どうなるか分からないけど挑戦して、失敗したことについても、新しい試みだと承認するほうが可能性は広がると思います。
ラグビーでも、無難にプレーする選手よりも、難しいプレーを果敢に試みる選手を承認します。その場で声掛けするだけでなく、僕は練習もすべてビデオ撮影するので、良い失敗はほかのメンバーにも見せて、こいつはこんなにチャレンジしていると伝えます。
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