ネットを遮断された「英語圏」の地域は、どうなったのか世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2017年06月22日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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日本でネットが遮断される可能性

 実はカメルーン以外に、いつでもネットを遮断することができる国がある。例えばエジプトは2011年に「アラブの春」が起きた際、活動家らの動きを封じるために遮断、イランもトルコも突然遮断したりアクセス制限を行なっている。中国もいつでも遮断できるようにしていると報じられている。また米国もかつて、大規模サイバー攻撃への防衛策として、ネットを瞬時に止めることができるようにすべきだとの法案が検討されたこともある。

 政府がやらずとも、事故が起きる場合もある。通信データの99%は海底に敷かれたサブマリンケーブル(海底ケーブル)を通って行き来する。そのケーブルが破損したり切れたりすると、突然切断されてしまうこともあるのだ。実際に、2006年には台湾沖で発生した地震でケーブルが使えなくなり、台湾、中国、香港、フィリピンで通信遮断が起きた。2008年にはエジプト、イラン、インドで、2011年には中東、東南アジアでそれぞれケーブル破損が原因で遮断が起きている。

 では、日本でネットが遮断されるような事態は起きるのだろうか。世界的に見ても高度にデジタル化・ネットワーク化されている日本では、ネット遮断によるダメージは想像できないほど大きくなるだろう。社会機能だけでなくビジネスも著しく滞ることになる。

 理論的には、海底ケーブルが切断されたり、すべてのプロバイダーがサービスを停止するなどすれば、ネットは利用できなくなる。ただ、独裁的な指導者が鶴の一声で反政府的な地域に対する遮断命令を出せるカメルーンのような国とは違う。民主主義国家の日本では現実にはネットをすべて遮断させることは難しく、カメルーンのような遮断が実施されることはないだろう。もちろん、3カ月もアクセスできない状態が続くことは考えにくい。

 日本の若者の約6割は、ネット空間が自分たちの「居場所」と考えているが、いまのところそこは安泰のようだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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