大井町駅と蒲田駅、便利なのはどっち?区役所最寄り駅対決(1/3 ページ)

» 2017年06月26日 08時00分 公開
[鈴木弘毅ITmedia]

編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍の中から一部抜粋し、転載したものです。『駅格差 首都圏鉄道駅の知られざる通信簿』(著・首都圏鉄道路線研究会、SBクリエイティブ)


 大井町駅と蒲田駅は、性格がよく似ている。ともにJR京浜東北線をメイン路線とする駅で、東急線との接続があり、京急線との接続がない。大きな駅ビルを擁し、東西両側に市街地が開けている。また、大井町駅は品川区役所の最寄り駅(厳密には東急大井町線の下神明駅のほうが近い)で、蒲田駅は大田区役所の最寄り駅である。

 個人的には、蒲田は庶民の街、大井町は少し高級な街というイメージを持っている。蒲田駅が高低差の少ないひと続きの市街地内にあるのに対し、大井町駅は坂の上にあり、少し標高が高く「山の手」を連想させるためだろうか。また、大井町駅前、特に西側には街路樹のある通りや緑道などが整備されており、蒲田駅前に比べて空間に余裕を感じる。

大井町駅と蒲田駅は、ともにJR京浜東北線がメイン路線

区の歴史からそれぞれの駅が紐解ける

 現在はよく似た性格に思える両駅だが、歴史をさかのぼると、違いは明白になる。大井町駅がある品川区は、東京23区が編成された1947年に、品川区(混同を避けるため、合併以前の品川区は以後「旧品川区」と記載)と荏原区が合併して誕生した。大井町駅がある場所は、このうちの旧品川区。旧品川区は、1932年に品川町、大井町、大崎町の合併で誕生している。区名に象徴されるように、旧品川区の中心市街地は京急沿線の品川町(北品川駅〜青物横丁駅付近)であり、大井町は中心的存在ではなかった。

 一方、蒲田駅がある大田区は、1947年に大森区と蒲田区が合併して誕生。大森区と蒲田区が同じくらいの規模であったことから、大森の「大」と蒲田の「田」を1字ずつ取って新区名としている。さらにさかのぼって蒲田区は、1932年に羽田町、蒲田町、矢口町、六郷町の合併で誕生している。区名が「蒲田」となったことから、4町の中で蒲田町が中心的存在だったことが分かるだろう。つまり、1932年に東京35区が編成された時点で、大井町は区の中心的存在ではなく、蒲田は中心だったのだ。

 従って、駅の開業も蒲田駅のほうが少し早い。1904年に、国鉄東海道本線の駅として開業している。大井町駅は、京浜線(現・京浜東北線)の運行が開始された1914年の開業だ。

 しかし、これは旅客駅としての開業。東海道本線と山手支線(大崎〜大井町)の接続ポイントとしての「大井聯絡所」は、蒲田駅よりも早く1901年に開設されている。山手支線は、日清戦争における軍需目的で建設され、終戦後にいったん使われなくなったが、のちに貨物列車運行のために再整備された。大井町は鉄道運行上の要衝であり、連絡所として開設され、のちに旅客駅に格上げされたのである。

 なお山手支線は、品川駅構内に貨物操車場が整備されたことに伴い、1916年に廃止になっている。近年になって東京高速臨海鉄道りんかい線が開通し、大崎・大井町間直通路線が誕生したが、これはむしろ山手支線の「復活」であると言えるかもしれない。

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