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» 2017年06月29日 08時00分 UPDATE

世界を読み解くニュース・サロン:やっかいな「ダークツーリズム」に近づいてはいけない (1/4)

北朝鮮で拘束されていた米大学生が解放された。ただ、その学生は意識不明のまま米国に移送され、その後死亡する。そもそも、なぜこの学生は国交のない北朝鮮に行くことができたのか。調べてみると、「ダークツーリズム」の存在が見えてきた。

[山田敏弘,ITmedia]

世界を読み解くニュース・サロン:

 今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

 欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。


 北朝鮮が相変わらずニュースをにぎわしている。

 直近の大きなニュースと言えば、北朝鮮で拘束されていた米大学生が解放された件だろう。

 2017年6月13日、北朝鮮で投獄されていたバージニア大学の学生、オットー・ワームビアが解放された。ただワームビアは、なぜか昏睡状態に陥っており、意識不明のまま米国に移送されることに。その後、米国内の病院で死亡した。

 彼は観光ツアーで北朝鮮に旅行中の2016年1月、平壌のホテルで政治的なポスターを盗んだとして逮捕され、15年の労働教化刑の判決を受けていたが、2016年3月の裁判直後から昏睡状態にあったと見られている。ちなみに北朝鮮はワームビアの裁判の様子を映像で配信し、彼がポスターを盗んでいる瞬間のビデオも公表している(参照リンク)。

 北朝鮮は、ワームビアがボツリヌス中毒になって睡眠薬を服用し、意識不明になったと主張した。米国での診察によると、心臓血管に何らかの問題が起きたとみられているが、彼の両親が検視解剖を拒否しているために、今後、死因が特定されることはなくなった。

 ワームビアの一件が米国と北朝鮮の関係性を複雑にする中、筆者が事件当初から気になっていたことが米国でも取り沙汰されている。そもそも、ワームビアが国交もない北朝鮮にどうやって「観光旅行」に行くことになったのか、だ。少し調べてみると、そこには「ダークツーリズム」を商売にしている人たちの存在があることが見えてくる。

 米国では今、ワームビアに対する痛烈なコメントも散見され、それがニュースで取り上げられて物議になっている。例えば米デラウェア大学のキャッシー・デットワイアー教授は、自身のFacebookで、自分が大学で教えている学生たちと比較して、彼の行動が「若く裕福で無知な白人男子の典型的な発想」だと痛烈に批判した。

 事実かどうかはどうあれ、人種的な批判を含めるこの発言が問題視されるのは当然だ。事実、世界中からデットワイアー教授を解雇しろと要求が来ていると報じられている。その一方で、ワームビアの行動が批判にさらされても仕方ないこともまた事実である。

なぜワームビアは、国境のない北朝鮮に行くことができたのか(出典:ヤング・パイオニア・ツアーズのFacebookページ)
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