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» 2017年09月11日 06時30分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:第2世代SKYACTIVシャシープロトタイプに緊急試乗 (1/5)

2019年に登場予定のマツダの第2世代SKYACTIVシャシー。そのプロトタイプにドイツで緊急試乗した。その詳細をレポートする。

[池田直渡,ITmedia]

 2019年に登場予定のマツダの第2世代SKYACTIVシャシー。そのプロトタイプにドイツで緊急試乗した。前回のSKYACTIV-X試乗の続編としてお届けする。

 マツダは今、クルマの質的向上に全エネルギーを投入している。それは自動車に対する価値観の大幅な革新だ。

マツダの第2世代SKYACTIVシャシーのプロトタイプに緊急試乗した マツダの第2世代SKYACTIVシャシーのプロトタイプに緊急試乗した

日本車の変革点

 バブル以降の日本車は、筑波サーキットでのアタックタイムを競ったり、高出力を競ったり、昨今なら電子デバイスによってものスゴい挙動を実現したり、そういう何らかのピークでベンチマークを叩き出すようなクルマ作りで競い合ってきた。ピーク値の話は「一等賞の話」なのでとても分かりやすい。しかし、クルマを本当に所有したとき、それはいつも楽しめるものかと言えばそういうものではない。普通の人は公道でドリフトなんてしない。例えばそういう場面で輝く電子デバイスなど、もしかしたらクルマを所有している間、一度も味わうことがないかもしれないのだ。

 そうやってさまざまなハイテクによって、ピーク値で欧州車を打ち負かした国産車が、欧州車を過去のものにできたかと言えば、まったくそういうことにはなっていない。ピーク性能が無意味だとは言わないが、それはクルマの価値の本質ではなかったことがもはや明らかになりつつある。

 エンジニアリングというのは結局リソースの割り振りだから、どこかのピークを上げれば、よほどのブレークスルーがない限りほかでマイナスが出る。それは大抵、日常域を犠牲にするものだ。頻度の低い条件でだけ光る高性能とは、毎日カップラーメンを食べながら月に一度高級レストランで散財するようなもので、最初は楽しいが熱が冷めると空しい。毎日おいしいお米を食べるような丁寧な生活の方が、本当は幸福なのではないか。そういう方向へ社会は変わってきている。

第2世代SKYACTIVシャシーとSKYACTIV-Xを搭載したテスト車は現行アクセラのスキンを被せて偽装されている 第2世代SKYACTIVシャシーとSKYACTIV-Xを搭載したテスト車は現行アクセラのスキンを被せて偽装されている

 マツダは自動車メーカーとしては小さい会社である。生産設備も限られている。2016年の生産台数は153万台。前年比で9.8%増加している。喜ばしいことではあるが、成長が続けばいずれ生産キャパシティが足りなくなる。工場をどんどん作って生産キャパシティを上げるか、利益率を上げるかを選択しなければならない。

 例えばトヨタは2000年代前半、毎年50万台もの増産を続け、08年のリーマンショックで手痛い打撃を受けた。1000万台オーバーという巨大企業になれたのはその大勝負のたまものだが、一方でその危険が骨身に沁みて、「もっといいクルマづくり」を提唱しはじめた。

 今、クルマを良くすることは、新興国のメーカーと価格では勝負できない日本の自動車メーカーにとって極めて重要だ。マツダと同じ局面にあるスバルも同じ。持続的に増収増益を果たしていくには、付加価値を高めていかないとリスクの高い増産勝負しか出口がなくなる。だからこそマツダだけでなく、トヨタもスズキもスバルもダイハツも……と、国産車は変わりつつある。丁寧な生活のような「日々味わえる幸せ」を、クルマの中核的価値に据えようとしているのだ。

 前回の記事で書いたようにSKYACTIV-Xが滋味深く穏やかで質感の高いエンジンに仕上がっているのもそうだし、これから書くシャシーもまたそういうものになっていた。

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