黒田日銀総裁の判断も予測! 「表情分析」があらゆる現場で普及するとき“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2017年11月22日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

表情も有力な情報源に

 黒田氏に「怒り」の表情が顕著となった7月の会見は、イールドカーブコントロールが発表される直前の会見である。この会見では、従来の政策を総括することを表明したこともあり、記者からは、これまでの成果をどう考えているのか、総括の内容はどうなるのかといった厳しい質問が相次いだ。

 こうした重大局面では、言い方を1つ間違えただけで市場に深刻な影響を与える可能性がある。会見にあたって黒田氏は通常よりも慎重になったと考えられる。黒田氏の表情に「怒り」の表情が多かったのは、怒っているというよりも、こうした厳しい状況を反映したものだろう。

 黒田氏の表情の変化が、直接、将来の金融政策を示唆したわけではないが、結果としてこの分析は、次回の金融政策決定会合における新しい政策の導入を予想したことになる。

 似たような現象はマイナス金利が導入される直前の15年12月の会見でも観察されている。日銀は16年1月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の導入を決定したが、その1つ前の金融政策決定会合では、従来の量的緩和策に対する「補完措置」の実施が発表された。

 これはETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)など、国債以外の購入枠を拡大することで、量的緩和策を補完するものであった。だが、この措置も抜本的な対策とはいえず、市場関係者の間ではスッキリしないとの印象が強かった施策である。当然、会見でも補完措置の内容や効果についての質問があり、黒田氏は多少、回答に苦慮した可能性がある。

 ここでも怒りの表情の比率が高まり、次回の金融政策決定会合では、結果的にマイナス金利政策という大きな政策変更が発表された。

 市場関係者の中には日銀ウォッチャーと呼ばれる人がおり、総裁の表情も有力な情報源の1つとなってきた。これまでは個人の勘が頼りだったが、この技術があればベテランでなければ働かすことができなかった「勘」についても可視化することが可能となる。

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